BtoB営業が知っておくべき基本フレームワーク

受注力を高める営業戦略フレームワーク9選

営業研修講師の海老原です。

1000件の商談経験から現場で使える営業戦略フレームワーク9選を解説します。ソリューション提案の営業フレームワークが4つ。営業戦略フレームワークが5つの合計9つです。

0.受注力を高めるオススメ営業戦略フレームワーク9選

ソリューション提案の営業フレームワークと4選。営業戦略フレームワーク9選を紹介します。

0-1.ソリューション提案の営業フレームワーク4選

ソリューション提案の4つの営業フレームワークが「BANT」「DMUマップ」「FABE分析」「3C分析」です。

4つの基本営業フレームワーク

情報収集フェーズで「何を聞くか」の営業フレームワークがBANT。その後の提案フェーズ「何を提案するか」に使える営業フレームワークがFABE分析です。

DMUマップと3Cは、商談全体を通して、「どこから情報を得るべきか」「どの視点で解釈するか」を考えるための営業フレームワークとして利用できます。

  • BANT(バント):Budget,Authority,Needs,Timeframeの頭文字をとった略語。
    「予算」「決裁権」「ニーズ」「導入時期」の4つの質問の切り口を示す営業フレームワーク
  • DMU:Decision Making Unitの頭文字を取った略語です。
    顧客の意思決定単位=顧客の意思決定者、または意思決定関与者を構造的に把握するための営業フレームワーク
  • FABE分析(ファベ):FABEとは、Feature、Advantage、Benefit、Evidenceの頭文字をとった略語。
    FABE分析は、提案のコンセプトや訴求方法の分析に使える営業フレームワーク
  • 3C分析:Customer(市場・顧客) Competitor(競合) Company(自社)の3つの視点で業界環境分析を行うフレームワーク

0-2.営業戦略フレームワーク5選

営業戦略フレームワークの全体像を次に示します。全体像は、マーケティング戦略策定のフレームワーク群と同じと考えて良いでしょう。

営業戦略フレームワーク
営業・マーケティング戦略フレームワーク全体像
  1. 戦略の基本構造:診断→基本方針→実行計画
  2. PEST分析:マクロ環境分析のフレームワーク
  3. 3C分析:業界環境分析のフレームワーク
  4. STP:誰に何を売るか、を決めるフレームワーク
  5. 4P:実行手段を分析するフレームワーク

1.BANT:営業ヒアリングフレームワーク

法人営業は、大きく「情報収集(ヒアリング)」と「提案」に分けられます。情報収集フェーズの営業フレームワークが、BANT(バント)です。

1-1.Budget(予算)のヒアリング

営業戦略フレームワークBANTの1つ目は、Budget=予算です。

  • どの程度の購買予算金額を想定しているか?
  • 予算確保の目処はあるのか?
  • 予算金額確保目処の確からしさはどの程度か?

「予算ヒアリングくらい営業の基本だろう」と思うかもしれません。しかし、BANTの予算は、営業質問スキル次第で得られる情報の質が大きく変わります。

1-2.Authority(決裁権限)のヒアリング

営業戦略フレームワークBANTの2つ目は、Authority=決裁権限です。BANTの決済権は、商談での次の状況を確認します。

  • 今回の商談金額で、最終決裁者は誰か?
  • 最終決裁者の判断基準は何か? 普段の基準は?今回は?
  • 承認過程で、方針に影響を与えたり、最終決裁者に上がる前に止める人物はいないか? いるとしたら、どんな影響を与えるか?

1-3.Needs(必要性)のヒアリング

営業戦略フレームワークBANT情報の3つ目は、Needs=顧客ニーズです。今回の商談において、次の内容を把握します。

  • 何に対するニーズか?
  • 誰にとってのニーズか?
  • ニーズは確かにあるか?
  • ニーズは強いか?

1-4.Timeframe(導入時期)のヒアリング

営業戦略フレームワークBANT情報の4つ目は、Timeframe=導入時期です。Timeframeは導入時期と訳されます。しかし、「導入時期」とだけ考えていては、BANTを深く理解することはできません。
「導入時期」はある1点の時間を示しています。例えば9月導入予定などです。一方「Timeframe」は時間の幅があります。商談がスタートしてから終了までの時間の流れがどのように進むのか。これがタイムフレームです。

営業戦略フレームワークBANTのタイムフレームでは、今回の商談で次の内容を把握します。

  • 導入時期はいつか?
  • 導入時期から逆算して商談スタートから商談決定全体のスケジュールはどうなるか?
  • 全体スケジュールのうち主要なマイルストーン(クリアしないと次に進めない中間地点)は何か?
  • それぞれのマイルストーンはいつか?
  • 各マイルストーンでキーとなる顧客メンバーは誰か?
  • マイルストーンをクリアするために自社はどんなスケジュールで動くべきか?

2.FABE分析:営業提案フレームワーク

法人営業は、大きく「情報収集(ヒアリング)」と「提案」に分けられます。FABE(ファベ)は提案フェーズの営業フレームワークです。FABE分析は、提案コンセプトをまとめるのにシンプルで使いやすい営業戦略フレームワークです。

FABE分析の構造化

2-1.FABE分析のF:営業提案の特徴

FABEのF、Feature は、提案や商品の特徴、概要説明です。提案概要を一言で説明します。1文、2文くらいの分量で端的にまとめます。

2-2.FABE分析のA:営業提案の優位性

FABEのA、Advantageは、競合(商品)に対する優位性です。「競合に対する」ですから競合を具体的にする必要があります。

例えば、マクドナルドの競合は、ファーストフードというカテゴリでは、モスバーガー、サブウェイなどが考えられます。あるいは、サラリーマンの昼食とすれば、コンビニ弁当なども競合になりえるでしょう。モスバーガーに対する優位性とコンビニ弁当に対する優位性は、表現が異なってくるはずです。

2-3.FABE分析のB:営業提案の顧客便益

FABEのB、Benefitは、顧客便益、顧客メリットです。
例えば、「とても小さい」は、商品の特徴ではありますが、直接顧客メリットを表現していません。例えば「(とても小さいので)ズボンのポケットに入ります」は、顧客メリットを表現してます。前アップルCEOの故スティーブ・ジョブズは、iPod発売の伝説的なプレゼンテーションで「スボンのポケットに1000曲入る」という顧客メリットを訴求しました。

2-4.FABEのE:営業提案の証拠

FABEのE、Evidenceは、裏付けとなる情報です。AdvantageやBenefitを根拠づける証拠です。
例えば、「政府統計」「科学的な実験データ」「専門家のコメント」などは証拠となります。

営業提案のEvidence(証拠)は2つの使い方があります。Advantage(優位性)に対するEvidenceとBenefit(顧客メリット)に対するEvidenceです。

文章なら次のような表現になります。
「この商品の優位性は、●●の性能が優れいてることです。具体的には、」
「この商品にはこのような顧客メリットがあります。例えば、」

3.DMUマップ:顧客理解フレームワーク

DMUマップは、情報収集から提案まで、商談プロセス全体を通して使う営業フレームワークです。
DMUマップは、顧客を理解し商談を進める上で「誰から情報収集するか?」「誰に向けて提案するか?」を考えるための地図として使えるBtoBマーケティングフレームワークです。

3-1.DMUマップ活用事例

DMUマップで、顧客の意思決定構造を分析した例を示します。

製造業工場のDMUマップ

こちらは、製造業の工場のDMUマップです。この場合、顧客企業は工場を複数持っています。そして、工場ごとに「生産技術部」「製造部」「購買部」という3つの組織を持っています。

3-2.DMUマップの使い方

DMUマップで、「各意思決定関与者の関心事はなにか?」「どのように意思決定に影響を及ぼすか?」「意思決定に及び素影響力はどのくらいか?」「自社に対する態度は?」など、全体像を構造的に把握します。

DMUマップは、関係者の全体像を視野を広げて網羅的にみるためにも有効です。例えば、営業研修でDMUマップ作成ワークがあります。その後顧客ニーズについて質問すると、「思ったよりお客様のことを分かってなかった。会うべきなのに会っていない人がいた」という声が多く聞かれます。一人で営業活動しているとどうしても視野が狭くなるのです。

3-3.DMUマップの書き方

DMUマップの書き方は様々です。まずは事例のようにシンプルな組織構造を把握しましょう。その際、部署単位だけでなく、1人1人誰がいるかを氏名・役職まで把握することが重要です。
特に購買意思決定に影響しそうな人物は必ず確認します。例えば、事例では製造部の「班長」は、工場の意思決定に関わるようなので、重要人物として把握します。

4.3C分析①:商談分析フレームワーク

3C分析はマーケティングで有名なフレームワークです。営業戦略はマーケティングの一部。つまり3C分析は営業戦略フレームワークとしても有効です。

3C分析では、Customer(市場・顧客) Competitor(競合) Company(自社)の3つの視点で業界環境をもれなく考えます。3Cの3者は営業商談のプレーヤーとも一致します。

  • Customer:本商談での顧客の状況は? 目的は?予算は?期間は?
  • Competitor:本商談での競合は誰か? どんな提案をしているか? いくらで提案しているか? 強み・弱みは何か?
  • Company:自社と顧客の関係は? 競合に比べた強み・弱みは?

4-1.Customer:商談中の顧客

業界を対象に3C分析を行う場合、Customerは市場・顧客と解釈します。
営業商談でのCostomerは商談相手の顧客1社のことです。
商談相手の情報を詳細に得るには、BANTなどの営業フレームワークを使います。

3C分析では、BANTで得た顧客情報と競合情報や自社情報を比較します。このようにフレームワークを組み合わせて使うことが有用です。

4-2.Competitor:商談を争う競合他社

通常は業界全体での競合を想定しますが、商談で3C分析を使う場合は、この商談を争う競合他社に絞って分析します。

商談の競合分析で最初におこなうべきこと

商談の競合分析において、はじめにすべきことは何でしょう。「この商談を争う競合は何社あるか?」「その競合は、どこか?」を顧客からヒアリングすることです。まずは、敵を知る必要があります。

商談の3C分析で犯しがちなミスが、提案最終段階になって競合調査を始めることです。提案の最終段階で競合情報がわかっても、手の打ちようがありません。最もありがちなのが、提案の差別化余地がない状況で競合との争いになり価格競争で疲弊するパターンです。

商談の早い段階から3C分析という営業戦略フレームワークを意識し、視野を広げて情報収集します。

5.戦略の基本構造

著書「良い戦略、悪い戦略」で戦略論の大家リチャード・P・ルメルト教授が提示しているのが、戦略の基本構造です。戦略のカーネルとも言います。

良い戦略は「診断→基本方針→行動計画」の3つの要素を持っている。悪い戦略は、要素が欠けている。

5-1.良い戦略、悪い戦略

良い戦略の事例を次に示します。

戦略の基本構造例

戦略の基本構造は営業戦略に限らず広く使える概念です。マーケティング戦略の大枠も「診断→基本方針→行動計画」の流れで示すことができます。

悪い戦略は3つの要素のいくつかが欠けています。例えば、医者が診断もなしに手術という基本方針を決めたら困ります。ただ、戦略と言いながら要素が欠けているものがおおいのです。例えば、「売上100億円」と言った目標だけかかげられるのが典型例です。

6.PEST分析:マクロ環境理解のフレームワーク

PEST分析は、業界を取り巻くマクロ環境を網羅的に捉えるフレームワークです。PESTとは、Political(政治)、Economical(経済)、Technical(技術)、Social(社会)の頭文字をとったものです。

PEST分析

7.3C分析②:業界理解の営業戦略フレームワーク

3C分析とは、市場、競合、自社の視点で業界を網羅的に把握するフレームワークです。3Cは、Customer、Company、Competitorの頭文字を取ったものです。

3C分析

8.STP:ターゲティング/ポジショニング

マーケティング基本戦略は、STPで表されます。STPとは、Segmantation、Targeting、Potioningの3つの頭文字をとったものです。

8-1.ターゲティング=分ける+選ぶ

ターゲティングとは、「分けること(Segmantation)」と「選ぶこと(Targeting)」です。

ターゲティング

市場をどのように分けるべきか。基本は似ている顧客群ごとに分けるべきです。「似ている」の基準は同一のニーズを持っていること。

8-2.ポジショニング

ターゲットは「どの顧客を狙うか」を決め、ポジショニングでは「顧客脳内での自社の位置づけ」を決めます。

ターゲットとポジショニング

ターゲットは顧客で物理的に存在するもの。一方、ポジショニングは顧客の脳内イメージで、物理的に存在しません。

9.4P(マーケティングミックス)

戦略の基本3要素のうち「行動計画」にあたるのが、マーケティングミックス(4P)です。

9-1.4Pとは

4Pとは、Product、Price、Place、Promotoinの頭文字をとったものです。製品、価格、流通、プロモーションの4Pは、行動計画・実現手段を整理するのに最適なマーケティングフレームワークです。

マーケティング・ミックス(4P)

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(文責:プロジェクトファシリテーター、ロジカルシンキング講師 海老原一司)


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