営業組織

5つの典型的営業組織課題とは|課題解決型 営業

「あなたの営業組織の課題は何でしょうか。」
「その課題は明確ですか?」

営業研修講師の海老原です。

自社の営業組織に課題があると感じている方は多いでしょう。しかし、一口に「売上を上げたい」といっても企業状況によって課題の性質は大きく異なります。
適切な解決策を考えるには、適切な問題定義が不可欠です。本記事では、典型的営業組織の課題を分類、整理します。

※ 過去の筆者作成記事を基に大幅に加筆修正

営業組織課題を整理する

営業組織課題を整理にアンゾフ成長マトリックスを利用します。

アンゾフ成長マトリックスで営業組織状況を分類

アンゾフ成長マトリックスを使って営業組織が置かれている状況を分類します。顧客が既存か新規か、商品が新商品か既存商品かで4つに分類できます。

既存商品新商品
既存顧客既存顧客に既存商品を売る既存顧客に新商品を売る
新規顧客新規顧客に既存商品を売る新規顧客に新商品を売る

5つの典型的営業組織課題

つぎに、4つに営業性質の違いを加え、営業組織課題は5つに分類できます。

  1. 既存顧客に既存商品を売るとき:営業マンの質の問題
  2. 既存顧客に既存商品を売るとき:営業マンの量の問題
  3. 既存顧客に新商品を売るとき:異なる商品特性の問題
  4. 新規顧客に既存商品を売るとき:異なる企業規模顧客攻略の問題
  5. 新規顧客に既存商品を売るとき:異なる業界攻略の問題

なお、「新規顧客に新商品を売る」での営業組織課題もあり得ます。しかし、新規事業で事業課題の比重が大きく営業組織特有の課題は比重が下がります。新規事業での営業組織課題は、考慮しないこととします。

【営業組織課題1】売れる人材がいない

営業組織課題の1つ目です。既存顧客に既存商品を売るとき、営業マンの質が問題になることがあります。つまり、「売れる人材がいない」という課題です。

平均的な営業マンとトップ営業マンの成績の差は2倍~5倍にもなります。特に営業が難しい業界・商品、単価が高い商品では営業スキルの差が顕著です。売れない営業マンは成約がほぼゼロ。一方トップ営業マンは100件以上成約を上げることもあります。

複雑な購買意思決定プロセスを掴む営業スキル

BtoBでは、商談金額が目安として100万円以上になると営業スキルの差が顕著になってきます。金額が10万円以下なら承認の流れはシンプルです。担当者が上長に簡単に確認しておわりでしょう。

しかし、金額100万円以上になると社内での承認過程に、上長やそのまた上長、あるいは他の関係者もでてきます。また、金額分のリターンがあるのか?他から購入するより安いのか?などもよりシビアにチェックされます。

このように購買意思決定プロセスが複雑になってくると営業スキル、経験の差が如実に表れてきます。平均的営業マンでは「商談が順調だったのに急遽失注となった。しかし、なぜ失注したかわからない」ということが起きるのも、この金額100万円以上からです。分かれ目は購買プロセスで、顧客内の意思決定の流れをどれだけ掴んでいるか。購買意思決定関与者のそれぞれについて「誰が、いつ、何を、どんな理由で、意思決定をしたか」をしっかりフォローできていれば、突然の失注はあり得ません。

【営業組織課題2】売れる人材が足りない

営業組織課題の2つ目は、既存顧客に既存商品を売るとき、営業マンの量が問題になることがあります。つまり、「売れる人材が足りない」という課題です。

商品は競合優位性がある。市場も伸びている。営業マンの数がボトルネックになっている場合、営業人材を増やす必要があります。人数を増やした上で売れる営業組織を作ることが必要です。

伸びている業界では、営業マンも人材市場として枯渇してきます。よって、営業経験が少ない人材、営業経験はあるが業界知識がない人材などを新たに採用し、教育していくことも必要です。

【営業組織課題3】売るものが違う

営業組織課題の3つ目は、既存顧客に新規商品を売るときの課題です。

既存顧客に新規商品を売る場合でも、商品特性が大きく変わらなければ営業組織課題にはなりません。例えば、企業向けにスマートフォンを販売していた営業マンが新たにタブレット端末を販売するのは比較的容易でしょう。

新商品の商品特性が既存商品と大きく変わる場合は、新商品販売は大きな営業組織課題になります。たとえば、売切り販売だったものがサービスモデルになる、モノ売りがソリューション型ビジネスへ移行するなどです。

なぜ営業組織課題になるのか。それは既存商品と売るための営業行動が異なるからです。たとえば、ソリューション型ビジネスににはモノ売りとは全く異なる営業行動が必要です。ヒアリング相手も変わり、提案の仕方も変わってきます。各営業マンの価値観を変える営業組織改革が必要です。

【営業組織課題4】異なる顧客業界を開拓する

営業組織課題の4つ目、5つ目は、新規顧客に既存商品を売るときの課題です。この課題は新規顧客の定義により「業界が異なる」「企業規模が異なる」の大きく2つに分かれます。営業組織課題4は、既存顧客と異なる顧客業界を開拓するときの課題です。

自社の売り上げが頭打ちになったとき、既存商品を転用して他業界へ販売を試みることは、どの企業でも有力な選択肢です。大きな追加投資なく、既存商品の販売先を広げられれば、企業にとっての見返りは大きくなります。

しかし、他業界への拡販はどの企業も考える有力選択肢でありながら、失敗することも多いです。それは、同じ商品を販売する場合でも、顧客業界が異なれば購買意思決定の構造、購買意思決定関与者の判断基準などが異なるからです。

この顧客業界特性の違いに対応した営業方法に営業組織として対応できるか?がポイントになります。対象業界のDMUの構造などを深く理解することが必要です。

【参考】DMUマップとは

【営業組織課題5】異なる企業規模顧客を開拓する

営業組織課題の4つ目、5つ目は、新規顧客に既存商品を売るときの課題です。この課題は新規顧客の定義により「業界が異なる」「企業規模が異なる」の大きく2つに分かれます。営業組織課題5は、既存顧客と異なる企業規模を開拓するときの課題です。

またこの営業組織課題は、既存のターゲット顧客規模で2つに分けることができます。

中小企業顧客を開拓したい場合

「大企業や中堅企業向けに販売していた商品を、新たに中小企業向けにも販売してきたい」

これは非常によくあるパターンです。私も実際に販売する立場、サポートする立場などで何度も体験したことがあります。大抵次のような状況です。

  • 商品が成熟。差別化もしづらい
  • 中堅企業以上のターゲットリストはほとんど全部行ってしまった。新規開拓余地がない

ただし、大企業・中堅企業に売れたから中小企業にも売れるだろうと高をくくって取り組むと痛い目を見ます。中小企業の特徴はなんでしょうか。

  • ターゲット顧客数が桁違いに多い:千から万の単位
  • 1商談の単価が桁違いに小さい:商談当たり10万から100万程度

対象顧客の数と単価が大きく異なり、これまでと同じ営業手法では効果的な販売は不可能です。例えば、デジタルなどの人手に頼らないマーケティング手法を駆使する。販売パートナーとして代理店を活用する。など個人の営業力ではなく、仕組みで売ることが必要です。

(文責:プロジェクトファシリテーター 海老原 一司)