「あなたは商談で聞きたいことをヒアリングできていますか?」
「あなたは営業ヒアリングシートを使いこなしていますか?」
営業ヒアリング失敗原因は大抵準備不足です。営業ヒアリングシートなど基本的事前準備をすれば成功確率は大幅に高まります。できる営業マンは基本をおろそかにしません。
営業ヒアリング成功には少ない商談チャンスを活かすチェックリストが有効です。私の過去1,000回以上の商談経験を元に「営業ヒアリングシートテンプレート」を作成しました。
BANTと仮説検証の2種類のヒアリングシートテンプレートがあります。無料ダウンロードして自由に使い回してください。ファイル形式はEXCEL、Word、PDFの3種類です。
※ 過去の筆者作成記事を基に大幅に加筆修正
1.営業ヒアリングシートテンプレートを使うべき理由
なぜ営業ヒアリングシートテンプレートを使うべきなのでしょうか。理由は2つです。
1-1.限られたヒアリングチャンスを活かすため
営業ヒアリングシートテンプレートを使うべき1つ目の理由は、限られたヒアリングチャンスを活かすためです。
BtoBでは一つの商談で、何度も訪問機会があるわけではありません。新規商談では、1,2回で営業ヒアリングが完了しないと次の商談ステップにたどり着きません。
営業ヒアリングシートテンプレートを活用し、1回1回の面談密度を最大限に高めます。
1-2.テンプレート横展開がしやすいため
営業ヒアリングシートテンプレートは、一度作成すれば使い回すことができます。自分自身の他の商談はもちろん営業部門内で使い回すのも容易です。
BtoBの営業商談は千差万別です。しかし、ヒアリングの要点は大きく変わりません。特に業界や商品特性が同じ顧客では営業ヒアリングで把握すべきポイントも共通点が多くなります。
2.営業ヒアリングシートテンプレートの型(BANT)
営業ヒアリングシートテンプレートに使えるフレームワーク紹介します。まずはBANT(バント)です。
2-1.BANTとは
BANTとは、次のようにBudget、Authority、Needs、Timeframeの頭文字をとった略語です。
- Budget:今回の商談の予算
- Authority:決裁権限者、決済承認のポイント
- Needs:顧客ニーズ(誰のどんなニーズか?どのくらい強いか?)
- Timeframe:導入時期、検討時期、承認時期など購買プロセスでポイントとなる時期
営業ヒアリングシートテンプレートのフレームワークとしてBANTはシンプルで最も使いやすいと思います。
2-2.BANTヒアリングシートテンプレート項目
BANTヒアリングシートテンプレート項目は、Budget(予算)、Authority(決裁権限者)、Needs(顧客ニーズ)の4つです。
ヒアリングシートテンプレートファイルから、商談中のメモ枠と注意事項をそれぞれ示します。
【BANT①】Budget(予算)
Budget確認用のヒアリングシート項目です。
(記入欄) ・XXXXXXXXXXX ・YYYYYYYYYYY ・ZZZZZZZZZZZZ |
予算ヒアリングの注意事項
- 今回の予算はいくらぐらいか?
- 予算は確保済みか? まだなら予算確保できそうか? 誰が予算額を決めるか?
【BANT②】Authority(決裁権限者)
決裁権限者確認用のヒアリングシート項目です。
(記入欄) ・XXXXXXXXXXX ・YYYYYYYYYYY ・ZZZZZZZZZZZZ |
決裁権限者ヒアリングの注意事項
- 顧客担当者の決裁権限は(決済できる予算金額はいくらまでか?)
- 今回の商談での最終決裁者は誰か? 稟議書の最終承認者は誰か?
- 決済判断に影響が大きいキーマンは誰か? また、キーマンの判断軸は何か?
【BANT③】Needs(顧客ニーズ)
ニーズ確認用のヒアリングシート項目です。
(記入欄) ・XXXXXXXXXXX ・YYYYYYYYYYY ・ZZZZZZZZZZZZ |
ニーズヒアリングの注意事項
- 具体的にどんなニーズか? ニーズは確かにあるか?
- 組織の目線で本当に必要か? 担当者の個人ニーズではないか?
- ニーズは強いか? またニーズが強いと言える根拠は何か? 根拠を定量的にいえるか?
【BANT④】Timeframe(導入時期)
導入時期確認用のヒアリングシート
(記入欄) ・XXXXXXXXXXX ・YYYYYYYYYYY ・ZZZZZZZZZZZZ |
導入時期ヒアリングの注意事項
- 導入時期はいつか?
- 導入時期だけでく、導入までの検討スケジュールはどのようなプロセスか? 各プロセスのマイルストーンはいつか?
- 導入決定までの各プロセスにおいて、顧客企業でいつ、誰が、何をするか? また、それに対して営業がサポートできることはなにか
3.営業ヒアリングシートテンプレートの型(仮説検証)
営業ヒアリングシートテンプレートに使える型の二つ目が仮説検証です。
仮説検証力の有無で営業ヒアリング効率は大きく変わります。
3-1.営業ヒアリングとは仮説検証すること
営業ヒアリングとは、なんでしょうか。筆者は「事前に立てた仮説をヒアリングにより検証すること」と定義しています。仮説とは仮の説明。効果的な営業ヒアリングのためには、積極的に仮説を出していくことが重要です。
3-2.仮説検証の流れ
営業ヒアリングの仮説検証は面談による商談を軸に進みます。
- 商談前:検証したい仮説を準備。どう聞くかもイメージしておく
- 商談中:事前仮説がすべてチェックできたか確認
- 商談後:仮説を評価。何がわかったのか?何がわからなかったのか?変更すべき仮説があったか?
営業ヒアリングにおける仮説検証の流れを図で示します。

3-3.営業ヒアリングシートテンプレート仮説検証版の内容
ヒアリングシートテンプレートは、仮説検証の流れに沿った10個のチェックリストになっています。
4.営業ヒアリングシートテンプレート記入例
営業ヒアリングシートテンプレートを使いこなすため具体的な記入例を示します。
4-1.BANT編ヒアリングシートテンプレート記入例
生産設備販売商談のヒアリングシート例です。
Budget:予算
購入予算は前年度踏襲、つまり1設備当たり500万円程度。現時点で予算化はされていなそう。来月●●事業部全体の事業計画承認があるよう。その後実際に予算が付いたかを確認
Authority:決裁権限者
A社の決裁権限は「部長100万以下、事業部長500万円以下」。今回は事業部長決裁になりそう。ただし、500万円を超えると役員会審議になり負荷が高いため事業部長決裁に抑えたいとのこと。これまで事業部長は同種の設備購入では、技術部のB部長の意見を参考にしていることが多い。今後B部長の意向も確認
Needs:顧客ニーズ
生産コスト2割減の事業部方針がでている。実現のために当社納品設備の稼働率向上が求められそう。今後、稼働率を指標としてよいのか? よいならどの程度の稼働率を目指す必要があるのか? をヒアリング
Time frame:導入時期、検討時期
導入時期は来年4月希望。逆算して来年1月中には発注の必要があることを伝えた。10-12月は、「10月:情報収集」「11月:検証」「12月:比較資料作成/部長会承認」を予定。早めに競合状況をつかむ必要がありそう
5.営業ヒアリングシートテンプレート活用のコツ
今回紹介するのはあくまで営業ヒアリングシートテンプレートです。つまりダウンロードしたファイルを生かすも殺すも皆さん次第です。
ここでは最大限の効果が得られるよう営業ヒアリングシートテンプレート活用のコツをまとめます。
5-1.営業ヒアリングは準備が8割
面談の前にしっかり準備することが必要です。当たり前のように思えますが、意外と日々の忙しさに流れて、面談でのその場しのぎの対応になりがちです。営業ヒアリング成否は準備が8割と覚えましょう。
5-2.ゴールイメージを持つ
事前に面談における営業ヒアリングゴールイメージを持っておきます。面談成否が明確にわかるくらい解像度高いゴールイメージを持つのがコツです。
例えば、BANTヒアリングシートテンプレートであれば、「BANTの4項目を埋める」ではなく、「各項目が、このくらい埋まっていること」とできるだけ具体的にイメージします。
記載のイメージについては「3.営業ヒアリングシートテンプレート記入例」を参照ください。
5-3.面談シーンをシミュレーションする
営業ヒアリングシートのゴールイメージを描いたら面談シーンを頭の中でシミュレーションします。「この項目を聞くには、自分はこういう質問をする。それに対してお客様はこう答える。また自分はこう返す」と営業ヒアリング中の会話のキャッチボールをシミュレーションします。
もちろん面談はシミュレーションそのままに進むことはありません。しかし、事前シミュレーションを行うだけで想定外への対応力が格段にあがるのです。
なお、この事前シミュレーションは日本総研を立ち上げた田坂広志の著書「営業力」で「シーンメイキング」として紹介されています。本書でも紹介されていますが、例えば面談直前で移動中の電車の中で5分間行うだけでもかまいません。短くても毎回行うことが重要です。
5-4.営業ヒアリングは最後は気合い
営業研修ではロジックを突き詰めて講義を行っています。講義の最後に「最後は気合い」という言葉を紹介しています。
「気合い」は「あきらめない力」と言い換えても良いでしょう。筆者は過去100人以上の営業担当者の商談に同行してきました。大抵の方が1回質問を投げるだけであきらめてしまいます。
例えば、次のような質疑です。
「予算はいくらくらいですか?」「言えないですね」「そうですよね」
これでは情報がとれるわけがありません。ここであきらめずに、いかに情報を引き出していくかが営業の腕の見せ所です。
6.営業ヒアリングシートテンプレート:フレームワーク解説
営業ヒアリングシートテンプレートを使いこなすには前提となる考え方を深く理解すべきです。BANTと仮説検証の解説記事を掲載します。
▶▶関連記事「 営業フレームワークBANT活用6つのコツ」
▶▶関連記事「 ニーズヒアリングのやり方:営業仮説を立て検証するコツ」
7.ヒアリングシートテンプレート(ファイル無料ダウンロード)
ヒアリングシートテンプレートを6つ紹介します。BANT編、仮説検証編のそれぞれにWord、Excel、PDFの3つのファイル形式を用意しました。
使いやすいファイル形式のテンプレートファイルをダウンロードして利用ください。
7-1.ヒアリングシートテンプレートBANT編
BANT編のWord版、Excel版とPDF版のヒアリングシートテンプレートです(内容は同じ)。
Word版ヒアリングシートテンプレート
Excel版ヒアリングシートテンプレート
PDF版ヒアリングシートテンプレート
7-2.ヒアリングシートテンプレート仮説検証編
仮説検証編のWord版、Excel版とPDF版のヒアリングシートテンプレートです(内容は同じ)。
Word版ヒアリングシートテンプレート
Excel版ヒアリングシートテンプレート
PDF版ヒアリングシートテンプレート
(文責:プロジェクトファシリテーター、ロジカルシンキング講師 海老原一司)
(参考)関連記事まとめ
課題解決型 営業
課題解決型営業の記事まとめです。
営業ヒアリング
- 「課題解決型 営業」と「御用聞き 営業」の違い
- 潜在ニーズの引き出し方 -質問の技術|営業ヒアリング
- ニーズヒアリングのやり方:営業仮説を立て検証するコツ
- 営業フレームワークBANT活用6つのコツ
- 【営業ヒアリングのコツ】初回訪問チャンスを最大化する方法
- 営業ヒアリングシートテンプレート集(EXCEL,Word,PDF形式無料ダウンロード)
営業提案
- FABE分析で作る営業提案書(チェックシートテンプレート付き)
- FABE分析とは:提案、商品設計フレームワーク
- 記憶に残る提案書作成のコツ -マジックナンバー7とは
- ピラミッドストラクチャーとは:具体例とおすすめの作り方
- 利用シーン別営業資料の作り方・使い方