マーケティング講師の海老原です。
PEST分析、3C分析、4P。マーケティング戦略立案にはフレームワーク活用が近道です。マーケティング戦略立案に使える定番フレームワークをまとめました。
1.マーケティングとは
マーケティングとは、顧客ニーズへの適合と優位を構築する活動です。

自社(企業)、市場(顧客)、競合の3つを俯瞰的にとらえ顧客ニーズへの適合と競争環境への適合(競争に勝つ)を行います。
良い戦略のフレームワーク
戦略論の大家リチャード・P・ルメルト教授の著書に「良い戦略、悪い戦略」があります。同書では「良い戦略には『診断』『基本方針』『行動計画』の3つの要素がそろっている」と言います。

逆に、診断、基本方針、行動計画のどれかが欠けていれば、それは悪い戦略です。
この「診断、基本方針、行動計画」は、マーケティングに限らずあらゆる戦略検討に使えるシンプルで使いやすい考え方です。
マーケティング戦略策定とフレームワーク
マーケティング戦略策定の流れにそってフレームワークをまとめたのが次の図です。

戦略策定プロセスごとのフレームワークを表にまとめます。
戦略基本3要素 | 戦略策定プロセス | マーケティング戦略フレームワーク |
診断 | 環境分析 | PEST分析、3C分析、SWOT分析 |
基本方針 | 基本戦略(STP) | Segmentation、Targeting、Positioning |
行動計画 | マーケティングミックス(4P) | Product、Price、Place、Promotion |
ニーズとウォンツ
マーケティングの原点は顧客ニーズの理解です。ニーズと混同しやすい言葉としてウォンツがあります。ニーズとウォンツは、目的と手段の関係と考えるとわかりやすいです。

実際に顧客のニーズとウォンツと区別するのは難しいものです。ニーズヒアリングの注意点に次の2つがあります。
- 顧客の発言は常にウォンツ寄りである
- 人は抽象的なことより具体的なことのほうが話しやすい
目的と手段の連鎖でニーズを掘り下げた例
次の2つは私が研修受講者に質問してウォンツ(欲しいもの)をあげてもらい、質問でニーズを掘り下げた例です。
営業部女性社員は、なぜ電動自転車が欲しいかを質問で掘り下げました。

▶▶参考記事リンク:「【営業実践講座②】ニーズとウォンツの違いとは」
2.マーケティング環境分析フレームワーク
マーケティング環境分析のフレームワークに、PEST、3Cがあります。PEST分析はマクロ環境、3C分析は業界環境を理解するためのフレームワークです。
PEST分析:マクロ環境分析フレームワーク
PEST分析は、業界を取り巻くマクロ環境を網羅的に捉えるフレームワークです。PESTとは、Political(政治)、Economical(経済)、Technical(技術)、Social(社会)の頭文字をとったものです。

マクロ環境とは
マクロ環境とはなんでしょうか。マクロ(Macro)には、英語で大きい、巨視的な、といった意味があります。しかし、これだけではどこまでの範囲をマクロ環境とするのか、判断が難しい。マーケティング戦略においては、自社の所属する業界の外の話全部、と理解するのがシンプルです。
3C分析:業界環境分析フレームワーク
3C分析とは、市場、競合、自社の視点で業界を網羅的に把握するマーケティング戦略フレームワークです。3Cは、Customer、Company、Competitorの頭文字を取ったものです。

▶▶参考記事リンク 『3C分析フレームワーク活用術|ファクト情報を集める7つのコツ』
3.マーケティング基本戦略フレームワーク(STP)
マーケティング基本戦略は、STPで表されます。STPとは、Segmentation、Targeting、Potioningの3つの頭文字をとったものです。
ターゲティング=分ける+選ぶ
ターゲティングとは、「分けること(Segmentation)」と「選ぶこと(Targeting)」です。

市場をどのように分けるべきか。基本は似ている顧客群ごとに分けるべきです。「似ている」の基準は同一のニーズを持っていること。
ポジショニング
ターゲットは「どの顧客を狙うか」を決め、ポジショニングでは「顧客脳内での自社の位置づけ」を決めます。

ターゲットは顧客で物理的に存在するもの。一方、ポジショニングは顧客の脳内イメージで、物理的に存在しません。
4.マーケティング戦略実行フレームワーク(マーケティング・ミックス:4P)
戦略の基本3要素のうち「行動計画」にあたるのが、マーケティングミックスです。マーケティングミックスではSTPで定めた基本方針をより具体的な実行計画に落とし込みます。

4P:行動計画整理のマーケティング戦略フレームワーク
4Pとは、Product、Price、Place、Promotionの頭文字をとったものです。製品、価格、流通、プロモーションの4Pは、行動計画・実現手段を整理するのに最適なマーケティングフレームワークです。
STPと4P
ターゲットとポジショニングは、マーケティング戦略の「誰に(Who、To Whom)、何を(What)」提供するかを規定します。STPの具体的な実現手段(How)を規定するのが4Pです。
価格戦略(Price)
4PのPriceは価格戦略です。価格戦略を考えるのに最も重要な価格ロジックについて説明します。
価格上限は、顧客が得る価値
価格算出ロジックについて、自社目線と顧客目線を比較したのが次の図です。

典型的な自社目線での価格算出ロジックはかかったコストに利益を乗せます。一方、顧客目線で考えるとコストがいくらかは判断基準になりません。支払い意思額(WTP:willingness-to-pay)は、顧客が得る価値によって決まります。
顧客が得る価値が自社の提供価格の上限です。
流通チャネル(Place)
4PのPlaceは流通戦略(流通チャネル)です。流通チャネルの主な役割を次の表にまとめます。
調査 | 製品に対する意識や意見などの情報収集する |
プロモーション | チャネルを巻き込んだ、販売促進活動 |
接触 | 予想される顧客を掘り起こし、これと接触していく |
交渉 | 価格やその他の取引条件における最終合意をとること |
ニーズ適合 | より細かな顧客のニーズに対応する |
物流 | 製品の輸送と保管 |
金融 | 流通に必要な資金の確保、配分(資金回収、分割払etc) |
流通チャネルをみるポイントは、「顧客の受け取り価値」はどの機能で高まるか、です。
流通チャネルは一般に4Pの中でもっとも構築に時間と労力がかかります。付加価値を出す役割、効率性/コストを追求する役割、など長期視点でメリハリをつけ流通チャネルを構築します。
プロモーション(Promotion)
4PのPromotionはプロモーションです。プロモーションの本質は顧客とのコミュニケーション設計であるためコミュニケーション戦略とも言います。
プロモーションで重要なマーケティングフレームワーク。態度変容モデルと購買検討プロセスについて解説します。
態度変容モデル
コミュニケーション設計を行うには、購買までの顧客行動をモデル化することが有効です。これを態度変容モデルと言います。
AIDMA:態度変容モデル代表フレームワーク
態度変容モデルで最も有名なフレームワークがAIDMA(アイドマ)です。

AIDMAは、Attention(認知)、Interest(興味)、Desire(欲求)、Memory(記憶に残る)、Action(行動=購入)の頭文字をとったもの。
AIDMAは、BtoCの態度変容モデルとして使いやすいフレームワークです。
コミュニケーション設計(AIDMAの例)
AIDMAでのコミュニケーション設計例を示します。態度変容をモデル化したうえで、顧客を次の態度に導くためにどのコミュにエーション手段を用いるか、最適な方法を設計します。
- 未認知→認知:TVCM、電車広告
- 認知→興味: 店頭POP、知人のおすすめ
- 興味→記憶: リターゲティング広告
- 記憶→購買: 販促キャンペーン
このように顧客の意識の流れをモデル化することで、コミュニケーション設計が容易になるのです。
(文責:プロジェクトファシリテーター、ロジカルシンキング講師 海老原一司)
(参考)関連記事まとめ
マーケティング
マーケティングの記事まとめです。
ニーズ
環境分析
環境分析の記事まとめです。
PEST
3C
SWOT
基本戦略(STP)
基本戦略(STP)の記事まとめです。
マーケティング・ミックス(4P)
マーケティング・ミックス(4P)の記事まとめです。
Product
Price
Place
Promotion
(参考)企業研修プログラム
マーケティング研修プログラム
『マーケティング研修プログラム』の記事まとめです。
課題解決型 営業研修
『課題解決型 営業研修』の記事まとめです。
ニーズヒアリング研修
『ニーズヒアリング研修』の記事まとめです。