マーケティング講師の海老原です。
新規参入における価格付けは、大きく二つの方針があります。スキミングプライシングとペネトレーションプライシングです。
本記事では、ペネトレーションプライシング(浸透価格設定)について解説します。
※ 過去の筆者作成記事を基に大幅に加筆修正
1.ペネトレーションプライシング(浸透価格設定)
ペネトレーションプライス(penetration price)とは、導入期から一気に市場への早期普及を図り、成長カーブに乗せることを目的とする価格設定のことです。
ペネトレーションプライス(penetration price)を取る価格戦略を、「ペネトレーションプライシング」といいます。英語でペネトレーションとは、「浸透すること」です。導入期から一気に市場への早期普及(浸透)を図り、成長カーブに乗せることを目的とする価格設定のことです。
ペネトレーションプライシングでは相対的に安い価格設定を行います。時には短期的な収支が赤字でもシェア拡大を狙います。ペネトレーションプライシングを成立させる理論的背景は規模の経済です。高い市場シェアを確保することで相対的に低コストで製品提供できることが前提となります。
2.「ペネトレーションプライシング」と「スキミングプライシング」
新規参入における価格付けは、大きく二つの方針があります。すなわち、「高価格に設定し利益を獲得する」か、「低価格に設定し数を普及させるか」の二択です。
これらをそれぞれスキミングプライシング(skimming pricing):高価格に設定)、ペネレーションプライシング(Penetration pricing:低価格に設定)と呼びます。
ペネトレーションプライス(penetration price)を取る価格戦略を、「ペネトレーションプライシング」といいます。英語でペネトレーションとは、「浸透すること」です。導入期から一気に市場への早期普及(浸透)を図り、成長カーブに乗せることを目的とする価格設定のことです。
ペネトレーションプライシングとスキミングプライシングの比較を表にまとめます。
価格戦略 | ペネトレーションプライシング | スキミングプライシング |
参入時の課価格設定 | 低価格に設定 | 高価格に設定 |
基本方針 | シェア獲得、市場拡大優先(導入時の低収益を甘受) | 高収益確保、投資の早期回収 |
ターゲット | 始めから広いマーケットを狙う。販売数量優先 | 始めは高価格でも購入してくれるイノベーター層。徐々にターゲット拡大 |
製品性能・品質 | 競合と機能、品質の大きな差がない | 競合比で高機能、高品質 |
3.ペネトレーションプライシング事例
ペネトレーションプライシングの事例を示します。
ゲーム機(ソニーと任天堂)
ペネトレーションプライシングの典型例がゲーム業界にあります。ソニーのPlayStationシリーズ、任天堂のWiiやSWITCHなどのゲーム機ハードウェアは、発売当初は「売れば売るほど赤字の逆ざや状態」と言われています。
※ 参考記事:PS5、売れば売るほど赤字の「逆ザヤ」6月解消 ソニー明かす
ソニーや任天堂のゲーム機は世界累計で数千万台規模の販売を狙って事業計画が作られます。またゲーム業界ではゲーム機本体のハードウェアが普及しないとソフトウェアの販売を伸ばすことが出来ません。
よって、ライバル企業より一刻も早くシェアを獲得するためゲーム機各社は逆ざやとなる価格設定をしても本体ハードウェアの普及させようとします。
数千万台規模の生産体制を構築するため、発売当初は赤字でも量産効果でハードウェア原価は低減していきます。ゲーム機では「当初は赤字でも製品ライフサイクルの全体を通じて利益がでればよい」という前提で価格戦略が立てられています。
デル(パソコン:2000年前後)
パソコン市場参入時に、ペネトレーションプライシングを採用したのがデル(DELL)です。
デルは、直販と受注生産方式(BTO:Built to Order)を背景に高品質なパソコンを低価格で提供しました。小売店経由で販売していたIBM、HP、NEC、富士通などがデルの価格に合わせられない間に、デルの売上、市場シェアは急上昇しました。
楽天モバイル
ペネトレーションプライシングのマーケティング戦略を使った事例に国内通信事業者の楽天モバイルがあります。
楽天モバイルは2020年9月30日月額2,980円で5Gのデータ通信料が使い放題となる「Rakuten UN-LIMIT」を発表しました。楽天モバイルは、損益分岐点を700万契約としており低価格で短期間に契約数を増やすことを狙っています。
4.ペネトレーションプライシング成立の条件
ペネトレーションプライシングが成立するには、次の3つの条件があります。
- 市場が価格に対して非常に敏感であり、低価格によって市場が拡大すること
- 生産コストと流通コストが販売量の増加に伴い低下すること
- 低価格によって競争が排除され、市場浸透価格を採用した販売者が低価格ポジショニングを維持できること
(文責:プロジェクトファシリテーター、ロジカルシンキング講師 海老原一司)
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