DMUマップ

DMUとは:法人顧客の意思決定関与者を見える化する

DMU(Decision Making Unit)とは、顧客の意思決定関与者です。

BtoBマーケティングでは顧客が個人消費者ではなく法人企業です。法人企業における購買プロセスは、BtoCと違い多くの人数が関わる組織的意思決定です。そこで顧客理解に使えるフレームワークがDMUマップです。

DMUマップで、顧客の購買意思決定構造を見える化することで、効果的な営業・マーケティング活動ができます。

1.DMU(Decision Making Unit)とは

DMUとはDecision Making Unitの頭文字を取ったもの。DMUは日本語では意思決定者、意思決定関与者といいます。

1-1.DMUマップとは

DMUマップは、顧客の意思決定関与者の所属、役職、氏名、関係性などを地図(マップ)のように記載します。

BtoBマーケティングでは、DMUマップで意思決定関与者を整理し顧客理解の共通言語として活用します。

ある製造業のDMUマップ具体例を下記に示します。

製造業のDMUマップ例
製造業のDMUマップ例

1-2.DMUタイプ

DMU=意思決定関与者はそれぞれ異なる役割を持っています。役割ごとにDMUタイプとして分類します。

ユーザー(使用者)

DMUタイプの一つが「ユーザー(User)」です。
ユーザーは企業が購買したものを利用する人です。BtoCの場合ユーザー=購買者のことが多いです。一方、BtoBでは、使用者と購買者がしばしば異なります。
たとえば、業務用パソコンは個々の社員が利用しますが、購買はシステム部門が一括して行うことが多いでしょう。

インフルエンサー(影響者)

DMUタイプの一つが「インフルエンサー(Infuencer)」です。
インフルエンサーは他のタイプと違って、購買意思決定プロセスに直接関与しません。

インフルエンサーの把握は、部署名・役職名ではなく個人名です。社内に「このことはあの人に相談した方がよい」という人がいたらインフルエンサーです。また、医薬など権威性が重視される業界では、ある分野で有名な教授がどういう意見を持っているかなども重視されます。

ディサイダー(決定者)

DMUタイプの一つが「ディサイダー(Decider)」です。購買の最終意思決定だけをする役割があるのもBtoB購買の特徴です。
通常ディサイダーは、部長、本部長などの組織長になります。

バイヤー(購買者)

DMUタイプの一つに「バイヤー(Buyer)」があります。BtoBでは、営業の対面となる購買者と使用者は度々異なります。たとえば、モバイル端末購入で「購買者=システム部門、利用者=営業」は典型例でしょう。

より複雑なDMUマップのケースでは、起案者(選定者)、ユーザー、購買者が異なります。購買額が大きく、継続的な取引になる場合が典型例です。
例えば、自動車会社が部品を購入する場合、選定は設計部門、ユーザーは製造部門です。バイヤーである購買部は、QCD(Quality=品質、Cost=コスト、Delivery=配送)にだけ責任を持ちます。一般にはQCDの中でもコスト削減が重視されます。

2.DMUマップを作るべき理由

顧客企業の関係者一覧を頭に入れている営業マンは多いでしょう。
なぜわざわざDMUマップを作成するのでしょうか。一手間かけてもあえてアウトプットとしてDMUマップを作成すべき理由があります。

2-1.企業顧客は個人よりユニット(集合体)

マーケティングで重要なのが顧客理解です。BtoBでは顧客とは1つの企業です。企業の購買意思決定プロセスは、一人一人の購買意思決定関与者の集合体(Unit=ユニット)です。
DMUマップで、顧客組織の全体像を把握。いつ誰のところにいくべきか顧客攻略の地図として利用します。

2-2.DMU(意思決定関与者)同士の関係性を掴む

DMUマップでは、誰が意思決定関与者かだけではなく、意思決定者同士の関係性を理解します。関係性理解には意思決定関与者のDMUタイプを意識します。

例えば、ユーザー(利用者)はバイヤー(購買者)にどんな影響を与えているか、ディサイダー(意思決定者)のインフルエンサー(影響者)は誰か、などDMUタイプ同士のつながりを理解します。

購買意思決定の流れからDMUマップを見る

購買意思決定の流れからDMUマップをみます。
「購買稟議を誰が起案し誰が最終決済するか?」「決済までに承認/チェックする人は誰か?」「承認以外で購買意思決定に影響を及ぼす人は誰か?その人は、どのような形で影響を及ぼすか」などを確認します。

2-3.DMUマップ作成で「何がわからないか」がわかる

筆者はBtoBマーケティング/営業研修講師として、よくDMUマップ作成演習を行います。このときわずか20-30分の議論で新たな発見が得られます。
例えば、「製造部門に営業しているが、設計部門から影響を受けている。設計部門担当者の訪問を増やすべきではないか」といった視点です。

DMUマップ作成演習で、営業担当者から最もよく出る感想は「思ったより自分の担当顧客のことを知らなかった」です。
「顧客担当者の上司の決裁権はどのくらいか?」「担当者の今年の目標は何か?」「部長の方針と担当者の方針はどう関連しているのか?」「他の部門から具体的に誰からどのような影響を受けるのか?」

このように具体的にDMUマップを掘り下げようとすると、意外と普段偏った意思決定関与者しかみていないことがわかります。

3.DMUマップの作り方

DMUマップ作成に当たって、どのようにお客様情報を集めるか。BtoBマーケティングの情報収集の基本は顧客ヒアリングです。

3-1.DMUマップで押さえるべき意思決定関与者

DMUマップ作成にあたり押さえるべき意思決定関与者は具体的にどんな人になるでしょうか。

窓口部署の担当者と上司を把握する

自社営業担当の顧客窓口担当者。その上司に課長や部長の役職者がいる組織形態が典型的でしょう。
DMUマップで最初に書くのが顧客窓口担当者部門の「ライン」です。

ラインを押さえる

顧客窓口部署とつながりが太い部署を押さえる

顧客窓口部門と日常業務で連携が深い部署は、DMUマップに記載すべきです。例えば、開発部と設計部、商品企画とマーケティング部、マーケティング部と営業部などは、目標の一部を共有しています。そのためお互いに影響を与え合います。

業務のつながりがある部署の影響

図では、事業部配下に製造部と営業部の2部門があります。このとき営業部は直接意思決定には関わりませんが、間接的に影響を与えます(インフルエンサー)。

例えば、製造部は営業部の販売予算を達成できるだけの生産量を確保できるような設備投資を行おうとするでしょう。

4.DMUマップ組織活用具体例

DMUマップは、基本的にBtoB営業が1社1社の顧客の意思決定構造を掴むために使います。

しかし、私はDMUマップには、マーケティングツールとしてもう一段上の使い方があると考えています。それは、組織に顧客理解のための共通言語を作ることです。

DMUマップは、顧客ごと、場合によっては同じ顧客でも商品ごとによって異なるのが普通です。しかし、ターゲット顧客層がある程度絞れている商品・サービスでは、横展開可能な、DMUマップの標準テンプレートを作ることが可能です。

4-1.マンション組合の典型的DMUマップ

私が顧問をしている東邦レオでのDMUマップテンプレート活用事例を説明します。

東邦レオのお客様の一つにマンション管理組合がいます。マンション管理組合の関係者は複雑です。一方、組合ごとの意思決定関与者はある程度の典型例を作ることができます。典型的マンション組合関係者DMUマップが次の図です。

マンション管理組合DMUマップ
マンション管理組合DMUマップ

マンション組合の意思決定に関わる主要プレイヤーです。

  • 理事会
  • 自治会
  • 修繕委員会
  • 植栽委員会
  • 植栽系クラブ(公式)
  • 植栽系クラブ(非公式)

4-2.標準テンプレートで全員がDMUマップを作れる

このように東邦レオでは、典型的なDMUマップをテンプレート化し共有しています。テンプレートを利用することで経験の浅い営業担当者もスムースにDMUを把握することができます。

また、テンプレート化しているので他のメンバーとの情報共有もし易く、マーケティング知識がなくとも社内共通言語としてDMUマップを使えます。

4-3.営業と現場担当者の共通言語にもなる

DMUマップは営業担当者が作成します。
しかし、営業だけでなく、植栽管理作業の実務を行う、現場リーダーやクリエイターにもDMUマップを使って顧客情報を共有しています。つまり、事業に関わる全員がDMUマップという共通言語を使ってコミュニケーションできるようになっています。

DMUマップを通じた会話
DMUマップを共通言語として現場と営業が会話

(文責:プロジェクトファシリテーター 海老原一司)