マーケティング講師の海老原です。
新規参入における価格付けは、大きく二つの方針があります。スキミングプライシングとペネトレーションプライシングです。
本記事では、 スキミングプライシング について解説します。
※ 過去の筆者作成記事を基に大幅に加筆修正
1.スキミングプライシング (上澄み価格設定)
スキミングプライス(skimming price)とは、製品の市場投入時・導入期に高価格を設定し、高収益力を確保するための価格設定のことです。
スキミングプライスを取る価格戦略を、「スキミングプライシング」といいます。
英語でスキミング(skimming)とは、「上澄みをすくい取ること」です。 つまり対象市場の上澄みである富裕層などの「高くても買ってくれる顧客」を狙った価格戦略です。 スキミングプライシングを行うことにより、商品の導入期から高収益力を確保し、投資の早期回収を図ることができます。売り上げは少なくとも高い利益を上げることができる価格設定方法です。
2.「スキミングプライシング」と「ペネトレーションプライシング」
新規参入における価格付けは、大きく二つの方針があります。すなわち、「高価格に設定し利益を獲得する」か、「低価格に設定し数を普及させるか」の二択です。
これらをそれぞれスキミングプライシング(skimming pricing):高価格に設定)、ペネレーションプライシング(Penetration pricing:低価格に設定)と呼びます。
スキミングプライス(skimming price)を取る価格戦略を、「スキミングプライシング」といいます。
ペネトレーションプライシングとスキミングプライシングの比較を表にまとめます。
価格戦略 | ペネトレーションプライシング | スキミングプライシング |
参入時の課価格設定 | 低価格に設定 | 高価格に設定 |
基本方針 | シェア獲得、市場拡大優先(導入時の低収益を甘受) | 高収益確保、投資の早期回収 |
ターゲット | 始めから広いマーケットを狙う。販売数量優先 | 始めは高価格でも購入してくれるイノベーター層。徐々にターゲット拡大 |
製品性能・品質 | 競合と機能、品質の大きな差がない | 競合比で高機能、高品質 |
3.スキミングプライシング事例
スキミングプライシングの事例を示します。
iPhone(Apple)
スキミングプライシングを適用している事例がApple社のiPhoneです。iPhoneの価格はスマートフォンの中でも最上位に位置づけられます。高い価格付けを可能とするのがアップルブランドにコミットする根強いAppleファンの存在です。また、AppStoreやiTunesなどのエコシステムを作り上げることで、スマートフォンを買い換えるときも引き続きiPhoneを選んでもらうという良いサイクルを作っています。
iPhoneの価格が下がるのは新機種発売後の旧機種だけです。ここで、「旧機種は新機種よりは低いものの他社より高い価格を維持していること」「旧機種は投資回収が終わった安い生産設備で製造できること」の2点からAppleは旧機種の販売でも非常に高い利益率を確保しています。
マイクロプロセッサー(インテル)
もう一つのスキミングプライシングを適用している事例がインテルのマイクロプロセッサーです。
インテルは約12ヶ月ごとに新しいプロセッサーを開発して市場投入しています。このときの価格は1000ドルという高価格です。最新のマイクロプロセッサーを搭載したパソコンやサーバー機器は、高価格帯ながら強力な処理能力を求める顧客層に購入されます。
新しいマイクロプロセッサーが発売されるたびに旧世代のチップの価格が下がります。競合他社が類似のチップを出し始めると旧世代の価格を下げて価格に敏感な顧客層を引きつけます。世代交代のたびに旧世代のチップの価格は段階的に下落していき200ドルで下げ止まります。このようにインテルは、市場の様々なセグメントから最大限の収益をすくい取るような価格戦略をとっています。
4.スキミングプライシング成立の条件
スキミングプライシングが成立するには、次の3つの条件があります。
- 製品品質やイメージが高価格帯を成立させるもので、その価格で製品を欲しがる購買者が多数いること
- 少量生産によるコストが高価格設定の優位性を打ち消すこと高くないこと
- 競合他社が市場に簡単には参集できず、自社価格より安く売ることがでいないこと
(文責:プロジェクトファシリテーター、ロジカルシンキング講師 海老原一司)
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(参考)企業研修プログラム
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