顧客ニーズヒアリング

ニーズヒアリングのやり方:営業仮説を立て検証するコツ

営業研修講師の海老原です。

課題解決型営業のコアスキルがニーズヒアリングです。

本記事では具体的なニーズヒアリングのやり方として、営業仮説を立て検証するコツを解説します。

1.課題解決型営業とニーズヒアリング

課題解決型営業は次の4つのステップで構成されます。

ソリューション提案

ソリューションとは問題解決です。前半が問題把握(=ニーズ把握)、後半が問題解決(=ソリューション提案)です。また、ニーズとソリューションは、さらに仮説立案と仮説検証に分けられます。

課題解決型営業のキモはニーズヒアリングです。営業仮説を立て、ヒアリングにより検証し、適切な課題を発見します。

なお、もちろんソリューションも重要ですが、解決策による差別化は年々難しくなっています。営業の最重要活動は課題解決より課題発見です。課題発見さえできれば、解決策立案は他のメンバーに任せることも可能です。

2.ニーズヒアリングの目的・ゴール

ニーズヒアリングの目的はなんでしょう。何を基準に達成したか判断すべきでしょうか。

2-1.顧客と営業で課題認識が一致すること

ニーズヒアリングのゴールの1つは、顧客と営業で課題認識が一致することです。

顧客の営業担当の課題認識
ニーズヒアリングゴールその1

図では、顧客は5つある課題のうち課題1、課題2、課題3を解決したいと考えています。

営業担当者は「顧客の関心はどの課題にあるか?」「課題の具体的内容は何か?」について共通認識を持つ必要があります。課題について営業仮説を立てヒアリングで検証し認識をすり合わせていきます。

なお課題解決型営業では、ニーズと課題はほぼ同じと考えて良いでしょう。

2-2.最も解決インパクトの大きい課題がわかること

ニーズヒアリングのゴールの二つ目は、課題解決インパクトが最も大きい課題がわかることです。

課題解決インパクトと自社解決力
ニーズヒアリングゴールその2

まずニーズヒアリングで発見すべきは課題解決インパクトが最も大きい課題です。なお、通常は自社ソリューションで最も課題解決インパクトが大きい課題を選びます。

ただし、自社単体で解決が困難であれば他社とパートナーを組んで提案することも選択肢です。

2-3.まとめ

如何に課題解決インパクトが大きいニーズを「見つけ」「顧客と合意し」「納得させされるか」。営業仮説を駆使してニーズヒアリングできるかが腕の見せ所です。

3.ニーズヒアリングとは仮説検証

ニーズヒアリングとは何をすることでしょうか。一言で言うと、ニーズの仮説検証することです。

3-1.顧客ニーズヒアリングは仮説検証すること

顧客ニーズヒアリングとは何をすることでしょうか。シンプルには、ニーズ仮説を立て、検証のためにヒアリングすることです。

顧客ニーズヒアリングは仮説検証サイクル
顧客ニーズヒアリングは仮説検証サイクル
  • ソリューション提案とは:ニーズとソリューションの仮説検証サイクル
  • 顧客ニーズヒアリングとは:事前のニーズ仮説立案とヒアリングによる検証
  • 仮説とは:仮の説明検証とは:ヒアリングにより仮説が正しいか、間違っていればどう違うかを確認すること

ニーズ仮説検証のポイント

ニーズ仮説検証のポイントを次に示します。

  • 仮説なきヒアリングは時間のムダ
  • 仮説検証はサイクル。検証の目的は「よりよい仮説を作ること」

1つ目のポイントは、闇雲にヒアリングするのではなく、まず仮説を作ることです。私がよく研修で伝えているのは「恐れず仮説を立てること」。大抵の受講者には間違っているかもしれない仮説は立てなくない、お客様に聞きたくない、という心理が働きます。
しかし仮説なしでは、いいヒアリングはできません。失敗を恐れずとにかく仮説を立てることが重要です。

2つ目のポイントは仮説検証はサイクルであることです。仮説は間違っている可能性があるもの。さらに1回の仮説検証で確認仕切れるとは限りません。よって検証は、仮説を検証仕切るというより、次の仮説の立てるためのステップと考えます。仮説検証のサイクルを繰り返すことで徐々に精度を上げます。

4.仮説検証型ニーズヒアリングのコツ

仮説検証型ニーズヒアリングのコツは次の3つです。

  • 視座を上げる、視野を広げる
  • 視点を変える
  • 目的の解像度を高める

視座を上げる、視野を広げる

仮説検証型ニーズヒアリングのコツ1つ目は「視座を上げる、視野を広げる」です。

営業ヒアリングはどうしても、普段会っている顧客担当者に、普段と同じ話を聞きがちです。

視座を上げる、視野を広げる

普段の1段上、2段上の視座から全体を眺めることです。いつもは見ていない領域ほど、新たな発見、発想のタネがあります。

なお、1段上、2段上とは例えば次のように視座を上げることです。

  • 担当者の視座→課長の視座→部長の視座
  • 特定工程の視座→プロセス全体の視座→同形製造ラインの視座(工場の場合)

視点を変える

仮説検証型ニーズヒアリングのコツ2つ目は「視点を変える」です。

課題発見では、複数の視点からチャンスを探します。

課題発見:視点を変える

例えば「コスト低減」が口癖の顧客がいたとします。普段は自社が販売する設備の価格低減の話になるでしょう。

しかし、この企業では、例えば生産性向上による、人件費削減、単位当たり減価償却費の効果がコスト削減効果が一番大きいかもしれません。であれば、自社が如何に生産性向上に貢献できるかを考えるべきです。

「視点を変える」は、特に顧客ニーズヒアリングやソリューション提案に行き詰まったときに、意識的に行うことがおすすめです。

目的の解像度を高める

仮説検証型ニーズヒアリングのコツ3つ目は「目的の解像度を上げる」です。

「営業実践講座②」では、ニーズとウォンツは目的と手段の関係であると説明しました。「目的の解像度を高める」とは、「ニーズの解像度を高める」と同義です。

目的の解像度を高める

仮説検証型ニーズヒアリングでありがちなのが、ざっくりなニーズ理解をしたらすぐに細かい手段に目がいってしまうことです。

手段を掘り下げる前に目的の解像度を上げることが重要です。目的の解像度が低ければ、解決策の切れ味も悪くなります。

なお、【営業の極意2】で記載した「なぜニーズは質問しないとわからないか」を再掲しておきます。

顧客が話す言葉は、ほとんどウォンツ である。
具体的な手段は話しやすいが、抽象的な目的は話しにくい。

言語表現で目的の解像度を高める

数学者シャノンの情報量の定義があります。
「情報量とは伝えた相手の曖昧さが減った量」
私はあらゆる研修でこの定義の意味を伝えることにしています。この感覚があるかないかで、解像度を高められるかどうかが違ってきます。

  • 受け手の曖昧さが減らない = 情報量ゼロ
  • 意識しなければ、言葉は曖昧に、抽象的になるもの
  • しかし、目的(ニーズ)表現は言葉も使わざるを得ない
    図、数値だけでは表現仕切れない

では、どの程度の言語表現を目指すべきか。「口頭補足説明なしに解釈がブレない精度の言語表現」が必要です。

営業研修で事前課題のニーズを説明するとき、私は受講者から能動的に説明することを禁止しています。ワークショップでは、課題提出者は一切話さず他の受講生が黙読。その後質疑応答に入ります。

なぜ、このようなワークショップ形式にするか。同じ企業の受講生同士で補足説明なしで理解できない、解釈がわかれるようでは、ニーズ仮説として言語表現が甘いからです。

顧客、営業担当者、関係者(技術者・上司など)で認識のブレがないような言語表現で記載しましょう。ソリューション提案には、顧客・営業間で正確な課題認識の一致が必要です。

AsIs-ToBeで目的の解像度を高める

目的の解像度を高めるのに使えるのがAsIs-ToBeです。AsIs-ToBeとは、現状と理想像です。課題解決のBefore/Afterそれぞれをできるだけ具体的にイメージします

AsIs-ToBeで解像度を高める

また、AsIs-ToBeは、1つではなくいくつかの要素に分けて考えるのがよいでしょう。目安は3つです。

次にまとめのイメージは「今回の課題はこういうことだと認識しています」と顧客に1分で話して納得感があるものです。また、AsIs-ToBeの具体化するなかで、まとめ自体に修正すべき点があればどんどん改定していきます。

仮説検証に求められる姿勢

仮説検証型のニーズヒアリングでは実行段階で意識面のハードルがあります。次の姿勢を読んで意識ハードルを乗り越えましょう。

間違いを恐れずに仮説を立てられるか

営業研修で仮説検証型ニーズヒアリングを教えると頻出するコメントがあります。

「今の情報だけだと、なんとも言えないですね」
「間違っているかもしれない見解をお客様に聞けません」

まず仮説とは仮の説明です。つまり定義からして仮説は間違っていて当然です。確実なものは仮説ではありません。
正しいこと、確実なことを言わなくてはならないという思い込みを捨てましょう。
そもそも仮説の間違いが許されないのなら営業担当は不要です。正確な仕様を把握するシステムさえあればよいでしょう。

(文責:プロジェクトファシリテーター、ロジカルシンキング講師 海老原一司)


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営業ヒアリング

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