価格戦略

価格戦略(プライシング)とは|4P分析|マーケティング戦略

マーケティング講師の海老原です。

価格戦略とは、マーケティングミックス4Pのひとつ「Price」のことです。「顧客が購入する製品の対価として支払う金額」を決めることが価格戦略の基本です。

※ 過去の筆者作成記事を基に大幅に加筆修正

1.価格設定で考慮すべき要因

製品やサービスの価格を決定するには企業の内部要因と外部環境要因の双方を考慮します。

価格決定に影響を与える内部要因

価格決定に影響を与える内部要因は次の4つです。

  • マーケティング目的
  • マーケティング・ミックス戦略
  • コスト
  • 組織

価格決定に影響を与える外部要因

価格決定に影響を与える外部要因は次の3つです。

  • 市場特性と需要特性
  • 競争環境
  • その他環境要因(経済情勢、流通チャネル、政府)

2.一般的な価格設定アプローチ

企業が設定する価格は、利益を生み出すには低すぎる値と、需要を生み出すには高すぎる値の間のどこかに位置しています。次の図は、価格設定における主な検討項目です。

価格設定検討項目

製品コストは価格の最低限度を規定し、製品に対する消費者の近く感覚は最高限度を規定します。二つの限度の間にある最適価格を見つけるために企業は、競合他社の価格、外部要因、内部要因を検討します。

これらの項目を検討し、最適価格決定するためには、大きく3つの価格設定アプローチがあります。「コスト志向型価格設定」「知覚価値志向型価格設定」「競争志向型価格設定」の3つです。

3.新規参入時の2つの価格戦略

新規参入における価格付けは、大きく二つの方針があります。スキミングプライシングとペネトレーションプライシングです。

スキミングプライシング(上澄み価格政策)

スキミングプライス(skimming price)とは、製品の市場投入時・導入期に高価格を設定し、高収益力を確保するための価格設定のことです。

スキミングプライスを取る価格戦略を、「スキミングプライシング」といいます。

英語でスキミング(skimming)とは、「上澄みをすくい取ること」です。 つまり対象市場の上澄みである富裕層などの「高くても買ってくれる顧客」を狙った価格戦略です。 スキミングプライシングを行うことにより、商品の導入期から高収益力を確保し、投資の早期回収を図ることができます。

スキミングプライシング事例:iPhone

スキミングプライシングを適用している事例がApple社のiPhoneです。iPhoneの価格はスマートフォンの中でも最上位に位置づけられます。高い価格付けを可能とするのがアップルブランドにコミットする根強いAppleファンの存在です。また、AppStoreやiTunesなどのエコシステムを作り上げることで、スマートフォンを買い換えるときも引き続きiPhoneを選んでもらうという良いサイクルを作っています。

iPhoneの価格が下がるのは新機種発売後の旧機種だけです。ここで、「旧機種は新機種よりは低いものの他社より高い価格を維持していること」「旧機種は投資回収が終わった安い生産設備で製造できること」の2点からAppleは旧機種の販売でも非常に高い利益率を確保しています。

ペネトレーションプライシング(市場浸透価格政策)

ペネトレーションプライス(penetration price)とは、導入期から一気に市場への早期普及を図り、成長カーブに乗せることを目的とする価格設定のことです。

ペネトレーションプライス(penetration price)を取る価格戦略を、「ペネトレーションプライシング」といいます。英語でペネトレーションとは、「浸透すること」です。導入期から一気に市場への早期普及(浸透)を図り、成長カーブに乗せることを目的とする価格設定のことです。

ペネトレーションプライシングでは相対的に安い価格設定を行います。時には短期的な収支が赤字でもシェア拡大を狙います。ペネトレーションプライシングを成立させる理論的背景は規模の経済です。高い市場シェアを確保することで相対的に低コストで製品提供できることが前提となります。

ペネトレーションプライシング事例:ゲーム機

ペネトレーションプライシングの典型例がゲーム業界にあります。ソニーのPlayStationシリーズ、任天堂のWiiやSWITCHなどのゲーム機ハードウェアは、発売当初は「売れば売るほど赤字の逆ざや状態」と言われています。

※ 参考記事:PS5、売れば売るほど赤字の「逆ザヤ」6月解消 ソニー明かす

ソニーや任天堂のゲーム機は世界累計で数千万台規模の販売を狙って事業計画が作られます。またゲーム業界ではゲーム機本体のハードウェアが普及しないとソフトウェアの販売を伸ばすことが出来ません。

よって、ライバル企業より一刻も早くシェアを獲得するためゲーム機各社は逆ざやとなる価格設定をしても本体ハードウェアの普及させようとします。

数千万台規模の生産体制を構築するため、発売当初は赤字でも量産効果でハードウェア原価は低減していきます。ゲーム機では「当初は赤字でも製品ライフサイクルの全体を通じて利益がでればよい」という前提で価格戦略が立てられています。

4.価格決定のロジック

4PのPriceは価格戦略です。価格戦略を考えるのに最も重要な価格ロジックについて説明します。

価格上限は、顧客が得る価値

価格算出ロジックについて、自社目線と顧客目線を比較したのが次の図です。

価格は何で決まるか

典型的な自社目線での価格算出ロジックはかかったコストに利益を乗せます。一方、顧客目線で考えるとコストがいくらかは判断基準になりません。

支払い意思額(WTP:willingness-to-pay)は、顧客が得る価値によって決まります。顧客が得る価値が自社の提供価格の上限です。

BtoBマーケティングでは顧客価値を定量化

価格決定において顧客が得る価値が重要であるのは、BtoCでもBtoBでも同じです。BtoBマーケティングで、特に意識すべきは顧客価値の定量化です。

BtoCではブランド力など数値化しにくい価格決定要因の比重が大きくなります。一方、企業の意思決定は個人に比べより合理的です。企業組織では、価値を定量化し経済合理的に意思決定しようとする圧力が働きます。

BtoBマーケティングでは、購買意思決定により顧客がいくら得するかを定量的に示す必要があります。

5.マーケティング・ミックス(4P)

良い戦略は「診断」「基本方針」「行動計画」の3要素を備えています。「行動計画」にあたるのが、マーケティング・ミックス(4P)です。

4Pとは、Product、Price、Place、Promotionの頭文字をとったものです。製品、価格、流通、プロモーションの4Pは、行動計画・実現手段を整理するのに最適なマーケティングフレームワークです。

STPと4P

STPと4P

マーケティング戦略の基本方針(STP:Segmentation、Targeting、Positioning)を具体的な実行計画に落とし込むためのフレームワークが4Pです。

ターゲットとポジショニングは、マーケティング戦略の「誰に(Who、To Whom)、何を(What)」提供するかを規定します。STPの具体的な実現手段(How)を規定するのが4Pです。

(文責:プロジェクトファシリテーター、ロジカルシンキング講師 海老原一司)


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