ピラミッドストラクチャー

ピラミッドストラクチャーとは:具体例とおすすめの作り方


「あなたはピラミッドストラクチャーの作り方を理解していますか?」

「ピラミッドストラクチャーの具体例イメージを持っていますか?」

ロジカルシンキング講師の海老原です。

ピラミッドストラクチャーは、論理構造をツリー上に整理するロジカルシンキングフレームワークです。有名なフレームワークですが、「実際のビジネスでピラミッドストラクチャーを使いこなすこと」には自信のない方が多いでしょう。

ピラミッドストラクチャーを仕事で使いこなせない理由は大きく2つあります。1つは、一般的なピラミッドストラクチャーの作り方が難しすぎること。2つ目は、ピラミッド構造とそのアウトプット具体例に触れる機会の不足です。

本稿では、シンプルなおすすめピラミッドストラクチャー作り方を多くの具体例を使って解説します。

1.ピラミッドストラクチャーとは

ピラミッドストラクチャーとは

ピラミッドストラクチャーは、その名の通りピラミッド構造で論理構造を整理する枠組みです。最終アウトプットして文章を書くとき、プレゼンテーション作成など、伝えたい主張とその根拠を構造化するロジカルシンキングフレームワークです。

ピラミッドストラクチャーの作り方の体系はピラミッドプリンシパルと言われます。マッキンゼーの社内教育担当だったバーバラ・ミント著の「考える技術・書く技術」で有名になりました。

一般的なピラミッドストラクチャー構造

一般的なピラミッドストラクチャー構造は、次のような図で表されます。

ピラミッドストラクチャーでは、ツリー状に論理構造が示されます。ツリーの上位と下位の階層は論理的につながります。上位が主張、下位が根拠の関係です。

石板を積み上げたピラミッドのような論理構造を作るため「ピラミッドストラクチャー」と呼ばれます。

ピラミッドストラクチャー
ピラミッドストラクチャー

【ピラミッドストラクチャー具体例】自動車市場に参入すべきか?

一般的なピラミッドストラクチャーの具体例を示します。次は「自社が自動車部品市場に参入すべきか?」について主張と根拠を構造化したピラミッドストラクチャー具体例です。

このピラミッドストラクチャーでは、「自社は自動車部品市場に参入すべきである」という主張を2階層目の3つの根拠で支えています。また、3つの根拠はそれぞれを主張として3階層目の2つずつの根拠で支えられています。

ピラミッドストラクチャ具体例

2.ピラミッドストラクチャーを使いこなせない理由

ピラミッドストラクチャーは最も有名なロジカルシンキングフレームワークの一つです。書籍、研修などピラミッドストラクチャーの学習機会はたくさんあります。

機会があってもピラミッドストラクチャーの作り方が浸透しないのはなぜでしょうか。大きく2つの理由があります。

ピラミッドストラクチャーは作り方が難しい

1つ目は、ピラミッドストラクチャーがフレームワークとしての難易度が高いことです。

自由度が高すぎて難しい

ピラミッドストラクチャーの良いところは自由度が高いことです。論理をつなげてピラミッド構造を作ることは決まっています。どこまで階層を広げるか、どのように構造化していくかは使う人次第です。

逆に自由度が高すぎて「アドバンテージマトリックス」や「4P」「3C」など枠組みがきっちり決まったフレームワークに比べ使いこなすのが大変です。

日常の仕事での活用法を学んでいない

ピラミッドストラクチャーを学ぶときは、大抵複雑な事例が使われます。例えば、「自社はこの市場に参入するべきか?」といった企業戦略レベルの複雑な意思決定判断を問われます。これは、MBAスキルの前提スキルとしてロジカルシンキングが位置づけられていることも一因です。

もちろん複雑なテーマでの意思決定判断にピラミッドストラクチャーは有効です。しかし、多くの人がピラミッドストラクチャーの作り方そのものではなく、手前のMBA的な戦略分析の難しさでつまずきます。

ピラミッドストラクチャーは、簡単な口頭報告、メール連絡など、日常業務で毎日活用できるフレームワークです。ピラミッドストラクチャーを日常業務で活用できることを目的とすれば、例えば「上司への報告」「お客様への連絡」のような何度も繰り返せる、自分ごとのテーマで訓練することがスキル習得の近道です。

ピラミッドストラクチャー具体例の不足

社内資料でピラミッドストラクチャーを見たことが何回あるでしょうか。おそらくほとんどないでしょう。よって、作り方の具体的イメージが掴みにくいのです。

なぜピラミッドストラクチャー具体例を目にする機会が少ないのでしょうか。

ピラミッドストラクチャーは最終成果物ではない

ピラミッドストラクチャーは、伝えたいことを論理的にまとめる便利なツールです。しかし、ピラミッドストラクチャーは、最終アウトプットではなく中間成果物です。

ピラミッドストラクチャーにてまとめた構造を、プレゼンテーション資料や文章に落とし込むことでやっと最終アウトプットができあがります。

ピラミッドストラクチャーは中間成果物

最終成果物であるプレゼンテーション資料やビジネス文書は社内に残ります。しかし思考の整理過程であるピラミッドストラクチャーは共有可能な形で保存されていることは少ないのです。

ピラミッド構造を使った最終成果物具体例の不足

「ピラミッドストラクチャーは中間成果物である。社内に残りにくいため具体例を見る機会が少ない」と指摘しました。

もう一つの問題は、「中間成果物であるピラミッドストラクチャー」「最終成果物である文章やプレゼンテーション資料」をセットで具体例として見る機会が少ないことです。最終成果物の具体的イメージがあれば、自分が何のためにピラミッドストラクチャーを作っているのか腹落ちし易くなります。

「4.ピラミッドストラクチャーと文章成果物:4つの具体例」で、ピラミッド構造と文章成果物の具体例をセットで掲載しています。

3.シンプルなピラミッドストラクチャーの作り方

ピラミッドストラクチャーはロジカルシンキングで最も有名なフレームワークの一つです。加えて、汎用性が高く本来活躍の場は多いはず。しかし、ビジネス現場では驚くほど活用されていません。

なぜ、ピラミッドストラクチャーが活用されないのか。それは、「汎用性は高いものの抽象的で難しい使い方しか説明されたことがない」「ピラミッドストラクチャーの具体例を見ることが少ないこと」が主な原因です。

まずは、仕事に使えるよりシンプルなピラミッド構造を解説します。

シンプルなピラミッドストラクチャー

次の図は汎用的なピラミッドストラクチャーを少し修正したものです。先ほどの図で示した「一般的なピラミッドストラクチャー」に比べて遙かにシンプルで簡単に感じないでしょうか。

シンプルピラミッドストラクチャー
シンプルなピラミッドストラクチャー

シンプルピラミッドストラクチャーの特徴は4つです。

  • 「要は」「サブ要は」「例えば」という日常語を使っている
  • 「要は」「サブ要は」「例えば」という3層構造が基本
  • 用語、見た目が、文章アウトプットイメージに近い
  • 書き方がシンプル。テキスト文だけでも構造が作れる

筆者が講師をしているロジカルシンキング研修では、毎回の講座でピラミッドストラクチャーを意識しながら実際に文章を書いてもらいます。最終成果物である文章を見ながら、ピラミッド構造について議論とフィードバックを行います。3か月間、全6回の講座で実践を繰り返すと、全員がしっかりとしたピラミッド構造を持った文章が書けるようになります。

シンプルピラミッドストラクチャーがおすすめな理由

なぜこのシンプルピラミッドストラクチャーをおすすめするのでしょうか。

ピラミッドストラクチャーからアウトプット作成がしやすい

ピラミッドストラクチャーの構造は「要は」「例えば」という日常用語で表されます。ピラミッドストラクチャーとアウトプットイメージが近いので文章などのアウトプットに落とし込むのが楽です。

ビジネス文章の99%は3層構造

おすすめピラミッドストラクチャーは3階層の例しか示していません。筆者はロジカルシンキング講師として1000件の文章を添削してきました。その経験からもビジネス文章の99%は3層構造で表すことができます。日常の仕事で最も使える3層構造のピラミッドストラクチャーを型として身につけるのがおすすめです。

次は典型的な3層構造の文章イメージです。

AはBだと考えます。理由は3つ。(1階層目)
一つ目の理由は、Cです。(2階層目)
なぜなら、Dだからです。(3階層目)
二つ目の理由は、Eです。(2階層目)
なぜなら、Fだからです。(3階層目)
三つ目の理由は、Gです。(2階層目)
なぜなら、Hだからです。(3階層目)

論理的な文章は見やすい

アウトプットが文章の場合、中間成果物であるピラミッドストラクチャーをみる機会はまずないでしょう。しかし、しっかり構造化された文章は、元となるピラミッドストラクチャーが透けて見えるものです。

論理的な文章は、見た目も見やすい。一見してわかりやすい文章構造を目指しましょう。

4.ピラミッドストラクチャーと文章成果物:4つの具体例

ピラミッドストラクチャーの作り方をマスターできない要因の一つは、具体例に触れる機会の不足であると述べました。多くの具体例に触れることで学習効果が高まります。しかし、ピラミッドストラクチャーやピラミッド構造を文章化した成果物具体例が掲載された書籍や、WEBサイトははあまりありません。

ロジカルシンキング講師として日々受講者の仕事のメール文章添削を行っている筆者が、アウトプットイメージまで含めたピラミッドストラクチャー具体例を示します。また、具体例は経営戦略のようなテーマ自体が複雑なモノではなく、日常の仕事や会話で使えるようなシンプルでわかりやすいテーマだけを選びました。

ピラミッドストラクチャー具体例①「上司に値引き説得」

上司のTさんに値引きを説得する文章を構造化したものを次に示します。

ピラミッドストラクチャー(上司に値引きを説得)

ピラミッドストラクチャー具体例では理由を3つ挙げています。枠組み例としてマーケティングの3Cを使っています。市場・顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つです。

事例の前提である営業商談では、3Cを使うと網羅的で納得感のあるロジックが作れると考えました。
3Cという枠組みでどんな論理を作っているか概要を示します。

値引きを了承してください(値引きしても大丈夫です)。なぜなら(1階層目)
値引きすれば競合C社に勝てます(Competitor)(2階層目)
値引きすれば顧客の承認がとれます(Customer)(2階層目)
値引きしても利益はでます(Company)(2階層目)

文章成果物具体例

4-1で作成したピラミッドストラクチャーを元に文章化したものを次に示します。

Tさん、A社提案の件が大詰めになってきたので、相談させてください。
今回、商品Bを提案しています。これを100万円から60万円で販売することを承認いただけませんか?

承認いただきたい理由は以下の3つです。

まず、60万円なら競合のC社に勝てそうです。機能はほぼ同等の商品を70万円で見積を出しています。

次に、お客様担当者のDさんは60万円ならうちの商品で通せそうだと言っています。E課長も価格が社内説明できれば、うちとの付き合いを優先したいようです。

最後に、B商品の粗利は50万円なので60万円でも利益がでます。今回の利益は下がってしまいますが、今回の案件で商談幅を広げることができるので、今年中に何件か追加商談ももらえそうです。

以上、A社向け商品Bの値引きについて承認ください。

(筆者作成。ロジカルシンキング研修Day1演習問題より)

ピラミッドストラクチャー具体例②「Zoomを導入すべき」

ピラミッド構造と文章具体例の2つ目は 「社内でオンライン会議システム導入提案する」です。

ピラミッドストラクチャー具体例(Zoom導入)

構造化された文章成果物(Zoom導入)

ピラミッドストラクチャーから構造化した文章に落とし込んだ具体例を示します。

オンライン会議システムZoomの導入を提案します。

まず、(Zoomに限らず)全員がいつでも使えるオンライン会議システムを導入すべきです。
当社でもテレワークが推奨されていますが、対面で会う機会はほとんどありません。実際いくつかの部門では仕事の抜け漏れなどコミュニケーションに支障が出ています。


次に、オンライン会議室システムを導入するなら使い方が簡単なZoomを導入するべきです。
オンライン会議システム活用には、すべての社員が等しく使えることが重要です。Zoomは操作もシンプルで普段パソコン慣れしていない50代の社員でも十分使えます。また、一般のセミナーなどで、すでに操作慣れている人が多いのもポイントです。

最後に、Zoomは導入実績が多いことも安心材料です。Teamsを選ぶ大企業は多いですが、当社のような中堅企業ではZoomの導入実績が圧倒的です。実際私がお付き合いしている中堅/中小企業はすべてZoomを導入しています。実績が多いため、情報システム部門の負担が軽いこともメリットです

(筆者作成)

例はテキスト文のみで図は一切使っていません。しかし、ピラミッド構造が透けて見えてくるような文章になっています。

ピラミッドストラクチャー具体例③「読書好きにはKindleがおすすめ」

ピラミッド構造と文章具体例の3つ目は「読書が好きな人に向けて電子書籍端末のKindleをすすめる」です。

ピラミッドストラクチャー具体例(読書好きにはKindleがおすすめ)

構造化された文章成果物(Kindleはおすすめ)

「Kindleはおすすめ」についてピラミッドストラクチャーから構造化した文章に落とし込んだ具体例を示します。

ビジネス書中心に毎年50冊ほぼ本を読んでいます。
以前は本はやはり紙で読むものと思っていましたが、最近は読書好きにはKindleが最もおすすめと思っています。

1つ目の理由は、今はほとんどすべての書籍がKindleで読めること。
読書好きの方は過去一度は電子書籍を検討したことでしょう。しかし、以前は電子版が出ている書籍はごく一部でした。好きな本が買えないのは読書好きにはストレスです。しかし、最近は新刊含めほぼ100%電子版が選択できます。
電子版しかない書籍もあるので、電子版の方が選択肢が多いかもしれません。

2つ目の理由はKindleはとても読みやすいこと。
初期の電子書籍は正直紙より読みにくかった。たくさんの本を読む読書好きにはこの差が大きい。最近のKindleの読みやすさは別格です。目が疲れることも全くありません。
ただこれだけなら紙も同じ。電子書籍ならではのさらに読みやすくできる機能もあります。まずは文字の大きさが変えられるところ。文字が小さくて読みにくくければ大きくすればよい。そして私が便利と感じたのは英語の書籍を読むとき。Kindleは難しい単語には英英辞典の内容を自動的に表示する機能を持っています。紙の本を読むときは一々辞書で調べていたのですが、辞書連携機能のおかげで英語版を読むスピードが大幅に上がりました。

3つ目の理由は、いつでもどこでもお風呂でも読めること。
読書好きは本を持ち歩いてどこでも読んでいる人が多いでしょう。読書好きは2,3冊を鞄に入れたいところですが、ハードカバー本でもあれば腕が疲れて持ち歩くのがおっくうになります。その点Kindleならどんなに分厚い本でも文庫本1冊の重さの端末に優に100冊以上の本が入ります。上着のポケットに入るくらいなので、隙間時間があれば、サッと取り出してすぐ読書タイムに入れます。
さらに電子書籍ならではのおすすめの使い方はお風呂で読むこと。最近のKindleは防水性も向上。ちょっとぬれてもまったく問題なし。湯船につかってリラックスしながら本を読む時間は、読書好きには至福のひとときです。

(筆者作成)

ピラミッドストラクチャー具体例④「モータースポーツ観戦はおすすめ」

ピラミッド構造と文章具体例の4つ目は「モータースポーツ観戦をすすめる」です。

ピラミッドストラクチャー具体例(モータースポーツ観戦はおすすめ)

ここで、ビラミッドストラクチャー具体例①~③との構造の違いに注目しましょう。

具体例①~③では、すべてメインの主張に対する理由が3つありました。対して具体例④では、メインの主張に対する理由は1つです。また、根拠が3つありますが、3つともすべて一つの理由をサポートしています(具体例①~③では、1つの理由に対して1つの根拠)。

全体構造のエッセンスだけ簡単に示すと次のようになります。

モータースポーツ観戦はオススメ(1階層目。メインの主張)
+人の限界まで心技体を問われる攻防が面白い(2階層目。理由1)
 ・「体」を限界まで問われる(3階層目。理由1の根拠その1)
 ・「技」を限界まで問われる(3階層目。理由1の根拠その2)
 ・「心」を限界まで問われる(3階層目。理由1の根拠その3)

構造化された文章成果物(モータースポーツ観戦はおすすめ)

「モータースポーツ観戦はおすすめ」についてピラミッドストラクチャーから構造化した文章に落とし込んだ具体例を示します。

私のおすすめは、モータースポーツ観戦(F1、Indy car)です。

おすすめ理由の一つは、人の限界まで心技体を問われ一瞬の判断が命取りになる攻防が面白いことです。

例えば、F1、Indy Carはなぜモーター「スポーツ」か。ドライバーはコーナーのたびに体重の5倍前後の負荷を受けています。相撲の力士1人分を遙かに超える負荷です。2時間のレースで5Lもの汗をかくそうです。

マラソンランナー並の体力に加え、ドライバーは驚異的な動体視力、反射神経を持っています。故アイルトン・セナは「この調整ができれば、次は最終コーナーで10cm外側を走れる」といったそうです。300Kmで走りながらの10cmのコントロールは神業としか言いようがありません。

そしてなにげにすごいのが、技、体力を極限まで追い込まれる状況で集中し続けられる精神力です。一瞬のミスが文字通り命取りであるモータースポーツでぶっ続けで2時間。数あるプロスポーツでも、ここまで過酷な環境は珍しいのではないでしょうか。

(ロジカルシンキング研修受講生課題テーマを元に筆者作成)

(文責:プロジェクトファシリテーター、ロジカルシンキング講師 海老原 一司)


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