潜在ニーズの引き出し方

潜在ニーズを引き出す顧客ヒアリング6つのコツ

営業ヒアリング講師の海老原です。

営業活動の出発点は顧客ニーズです。営業の最も重要な活動は「顧客ヒアリングより潜在ニーズを引き出すこと」。

本記事では、1000件以上の商談経験を持つ筆者が、潜在ニーズを引き出すための顧客ヒアリング6つのコツを解説します。

潜在ニーズとは

潜在ニーズとは何でしょうか。まずは、ニーズとウォンツの違いを理解。そのうえで、潜在ニーズと顕在ニーズについて説明します。

ニーズとウォンツ

ニーズとウォンツ

ニーズとは、人の欲求が満たされていない状態。人が感じる欠乏状態のことです。例えば、「のどが渇いたので水が飲みたい」なら喉が渇いた状態がニーズです。

ウォンツとは、ニーズに対する具体的な要望です。例えば、「のどが渇いたので水が飲みたい」なら水が飲みたいがウォンツです。

潜在ニーズと顕在ニーズ

ウォンツ>顕在ニーズ>潜在ニーズ

潜在ニーズとは、何かしら欲求があるが、顧客に明確な自覚がなく、何が欲しいかを理解できない、意識できない状態です。

潜在ニーズは、欲しているものがわからないため、このままでは購買に至りません。購買行動を起こさせるには、潜在ニーズを何らかの形で顕在化させる必要があります。

潜在ニーズを引き出すべき理由

潜在ニーズを引き出せると商談を有利に運べます。なぜでしょうか。

顧客が話す言葉は、ほとんどがニーズではなくウォンツ

ヒアリングにおいて顧客が話す言葉は、ほとんどがニーズではなくウォンツです。なぜなら、人はニーズよりウォンツの方が話しやすいからです。

目的であるニーズは抽象的な概念です。一方、手段であるウォンツは具体的です。人間は、抽象的なものより具体的なものの方が、頭に浮かべやすい、話しやすいのです。よって、顧客は意図せずとも、抽象的なニーズより、具体的で話しやすいウォンツを多く語るのが当然です。ヒアリングでは、ウォンツに流れやすい人間の性質を理解したうえで、顧客からニーズを引き出す努力をしなければなりません。

顧客は潜在ニーズを引き出した営業から購入する

ニーズが顕在化していた場合、企業顧客は課題を解決するモノまたはサービスを自ら探します。このとき特別な条件がない限り、広く情報を集め複数社を比較して、安くて質が良いものを選択するでしょう。

しかし、例えば、顧客が理解または意識できていない潜在ニーズを顕在化することをサポートしてくれる営業がいたらどうでしょう。
自分が意識していなかったが重要な課題に目を向けさせてくれた。潜在ニーズを引き出し、顕在化を助けた営業担当者から購入する可能性は大きく高まります。また、競合が増えても顧客理解度で有利になります。

潜在ニーズを引き出せば顧客のパートナーになる

潜在ニーズを引き出せると、商談受注率が高まります。長期的により重要なのは、顧客だけでは気づかない隠れた課題を見つけることで、顧客のパートナーになれることです。

顕在化したニーズに対して、顧客が指定したモノまたはサービスを持ってくるだけでは、下請け業者と見なされます。いわゆる御用聞き営業です。

一方、顧客が気づいていない課題、気づいていても解決方法がわからない潜在ニーズをうまく顕在化してくれる営業担当者がいれば、顧客は困ったことがあれば真っ先に相談するようになるでしょう。これが課題解決型営業です。

課題解決型営業は、下請けではなく顧客と対等なパートナーの関係を築きます。購入先として価格交渉をする利益相反の関係ではなく、同じ目的を共有し一緒に課題を解決します。

潜在ニーズの引き出し方の基本

ニーズは目的、ウォンツは手段

「喉が渇いたから水が飲みたい」の例では、ニーズとウォンツの区別は簡単でした。しかし、ニーズとウォンツは1対1の関係だけではありません。1対多になることも、複数回連鎖していく場合もあります。

わかりやすい整理の仕方が、ニーズとウォンツを目的と手段の関係で捉えることです。

ニーズとウォンツ

ニーズは目的、ウォンツは手段であると説明しました。ニーズを引き出すには、相手の発言をウォンツ(手段)と考え、「それは、なぜか?」「その目的は?」と質問します。

目的と手段の連鎖でニーズを掘り下げる

目的と手段の連鎖でニーズを掘り下げた具体例を示します。 営業部女性社員は、なぜ電動自転車が欲しいかを質問で掘り下げました。 「電動自転車が欲しい」というウォンツからスタートし、目的と手段の連鎖を3回繰り返し「モテたい」という、より上位のニーズ(潜在ニーズ)を引き出しました。

営業部女性社員のニーズを掘り下げる
営業部女性社員のニーズを掘り下げる

潜在ニーズを引き出すコツ①:ヒアリングゴール・目的を設定

潜在ニーズを引き出すコツ①:ヒアリングゴール・目的を設定

潜在ニーズを引き出すコツの1つ目は、目的・ゴールを明確にすること。ここで良くある間違いが、既存の考えにとらわれずにゼロベースでヒアリングするべき。よって、事前準備や目的設定をすべきではない、というもの。この考え方は明らかに間違いで、成功例を見たことがありません。目的設定が難しくても可能な範囲で解像度の高いゴールイメージを描く。予想のないところに予想を超えた回答はありません。

潜在ニーズを引き出すには、事前に何を目的にどんな情報をどこまでヒアリングで引き出せればよいか、目的・ゴールを明確にすることが必要です。

潜在ニーズを引き出すコツ②:面談前にシーンメイキング

潜在ニーズを引き出すコツ②:面談前にシーンメイキング

潜在ニーズを引き出すコツの2つ目はシーンメイキングをすることです。「シーンメイキング」は、多摩大学学長の田坂広志氏が著書「営業力」で活用を進めています。

潜在ニーズを引き出すための準備として、質問リストを思い浮かべる方は多いと思います。「シーンメイキング」とは、紙面上だけでなく、聞きたいことを引き出すため自分がどのような質問をするか、相手はどのような返答をするか、いつどこでどんな資料を出すか、など具体的場面を映像レベルで頭に描きます。頭の中で寸劇をするイメージです。

潜在ニーズを引き出すヒアリングは、事前の予測通りには行きません。ただし、しっかり事前シミュレーションを行ったものだけが、予想外の対応に柔軟に対応できるのです。

潜在ニーズを引き出すコツ③:「要は」「例えば」を使いこなす

潜在ニーズを引き出すコツの3つ目は「要は」「例えば」を使いこなすこと。
潜在ニーズは複数の質問を重ねて引き出すものです。顧客の回答から抽象化(「要は」)、具体化(「例えば」)をインタラクティブに繰り返して徐々に深掘りします。

「要は」を使いこなす

相手の発言を抽象化し共通項を引き出したいときに使う言葉が「要は」です。
例えば、「今のおっしゃった内容は、要はこのようにかんがえてよろしいでしょうか?」といった形で使います。

帰納法的にまとめるには、「要は」以外にも、「まとめると」「つまり」「言い換えると」などの言葉を会話のストックとしておくと便利です。

「例えば」を使いこなす

相手の発言の具体化を促したいときに使う言葉が「例えば」です。例えば「品質が高い、とおっしゃいましたが、例えばどんなときに感じましたか?」といった形で使います。

抽象的な発言を具体化するには、「例えば」以外にも、「具体的には」「とおっしゃいますと」「理由を教えていただけますか」などの言葉を会話のストックに持っておきます。

潜在ニーズを引き出すコツ④:話がそれても諦めない

潜在ニーズを引き出すコツの4つ目は、「諦めないこと」。
「諦めない」というと単なる精神論のように思えます。しかし、ニーズヒアリングの実践的心構え、テクニックとして諦めないこと、は重要です。

例えば、一度の質問で想定した回答が返ってこなかったり、うまく質問が伝わらなかったりすると、多くの方が諦めてしまいます。潜在ニーズを引き出すには、一度質問が外れただけで諦めててはいけません。相手から的を射た答えが返ってこなくとも、切り口を変えて諦めずに何度もトライすることが必要です。

潜在ニーズを引き出すコツ⑤:事実と解釈を分ける

潜在ニーズを引き出すコツ⑤:事実と解釈を分ける

潜在ニーズを引き出すコツの5つ目は、「事実と解釈を分けること」。
潜在ニーズを引き出すためには、丹念に質問を繰り返していくことが必要です。引き出した情報を整理するとき気をつけるべきことが「事実と解釈を分けること」です。

顧客の発言には大抵解釈が入っています。「品質が高い」「安い」「うちでは使えそう、使えない」。これらは、解釈された自分の意見です。意見、解釈がでたら、事実を確認します。例えば「品質が高いとは、具体的にはどういうことでしょう?」「安いとは、いくらぐらいのことでしょうか?それは初期比ですか?運用費も含めてですか?」と解釈前の事実も把握します。

また、企業顧客では顧客が発言した事実が確実性が高いかの確認も必要です。例えば、「このサービスの使用回数は毎月10回程度です」と数字入りの事実情報を入手したとします。
数字が含まれていても客観的事実とは限りません。曖昧な情報しか持っていない方が自分の主観で予想数字を出していることも多々あります。企業顧客では、確度が低い情報は複数の経路からダブルチェックすることが有効です。

潜在ニーズを引き出すコツ⑥:事実の根拠を集める

潜在ニーズを引き出すコツの6つ目は、事実の根拠を集めること。
ニーズヒアリングで事実と解釈を分けると言いました。事実情報を入手したら、その根拠を集めます。

例えば、「A業務の業務量が5割ほど増加して手が回らなくなっている」という課題があったとします。このとき、業務のどの部分が5割増加したのか、なぜ増えたのか、その根拠、メカニズムを深掘りします。

すると、例えば、顕在ニーズは「業務量が増えたので業務を効率化したい」かもしれません。しかし、根拠を深掘りすることで、「業務を効率化するのではなく、作業自体をなくしたい」「A業務の前工程のB業務の品質が悪いため、A業務の効率が落ちている。手をつけるべきはB業務」といった、潜在ニーズが見えてきます。

潜在ニーズを引き出す顧客ヒアリング例

潜在ニーズを引き出すことは一つの質問だけで完結できるものではありません。相手の回答を見ながらインタラクティブに質問して掘り下げていきます。

ただし、インタラクティブに質問するといってもどうやったら潜在ニーズにたどり着けるかイメージがわからない方も多いでしょう。筆者が営業研修やマーケティング研修で質問して深掘りした具体例を2つ示します。質問具体例をみて、潜在ニーズを引き出し方のイメージを頭に入れてください。

潜在ニーズを引き出したヒアリング例①

「顧客が営業担当者に求めること」の潜在ニーズを深掘りしたヒアリング具体例(その1)です。

浅いヒアリング潜在ニーズまで引き出すヒアリング具体例
「当社営業の良いところは『無理を聞いてくれる』との意見が多いですがいかがでしょう?」「当社営業の良いところは『無理を聞いてくれる』との意見が多いですがいかがでしょう?」
【顧客】「そうですね」【顧客】「そうですね」
「ありがとうございます」(終了)「例えば、どういう時にそう感じましたか?」
【顧客】「価格について頑張ってくれますね」
「価格ですね。具体的に、特にどんな商品のときそう感じましたか?」
【顧客】「商品AとBのときかな」
「商品AとBですね。共通点はないでしょうか? 例えば、技術的に特殊な部品などでしょうか?」
潜在ニーズを引き出す質問具体例①

潜在ニーズを引き出したヒアリング例②

「顧客が営業担当者に求めること」の潜在ニーズを深掘りしたヒアリング具体例(その2)です。

浅いヒアリング潜在ニーズまで引き出すヒアリング具体例
「当社と取引いただいている理由で思い浮かぶものを教えてください」「当社と取引いただいている理由で思い浮かぶものを教えてください」
【顧客】「御社と取引してるのはひとえに『安心感』ですね」【顧客】「御社と取引してるのはひとえに『安心感』ですね
「ありがとうございます」(終了)「例えば、どういう時に感じましたか?」
【顧客】「こちらの意図をよく理解して提案してくれます」
「例えば、どんな提案でしょう?他社と何が違いましたか?」
【顧客】「生産機器向け部品は、耐久性とか一般的な民生品と求められることが違うんです。御社は、そこを理解した上で適切な提案をくれる。半導体商社は商品そのものについては詳しくても産業機械のことがわからないんです」
「商品AとBですね。共通点はないでしょうか? 例えば、技術的に特殊な部品などでしょうか?」
潜在ニーズを引き出す質問具体例②

(文責:プロジェクトファシリテーター、ロジカルシンキング講師 海老原一司)


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