ハンニバルに見る戦略実行のポイント

天才ハンニバルに学ぶ戦略実行のポイント「設計」とは

「あなたは戦略と実行のどちらが重要だと思いますか?」

ロジカルシンキング講師の海老原です。

戦略と実行。変化の激しい時代には戦略は立てても意味がない、実行がすべてだ。という考え方もあります。筆者は、どちらか一方ではなく戦略実行。実行できるところまで考えて戦略であるという立場です。

戦略実行に重要な概念が「設計」です。設計は筆者が最もおすすめする戦略本「良い戦略、悪い戦略」の9章のテーマです。本稿では「天才ハンニバルに学ぶ戦略実行のポイント『設計』とは」と題してポイントを解説します。

1.戦略実行のポイント「設計」とは

良い戦略の基本構造

リチャード・P・ルメルト教授の著書「良い戦略、悪い戦略」における中心概念が良い戦略の基本構造です。ルメルトは「良い戦略にはしっかりした論理構造があり、診断、基本方針、行動の3つの要素で構成される」といいます。

戦略の基本3要素

戦略実行に必要なのは綿密に設計された行動計画

良い戦略の基本構造は「診断、基本方針、行動」の3つの要素で構成されます。戦略実行で重要なのが、基本方針に対応する行動です。ここでのポイントは行動とは英語ではAction Plans。つまり複数の実行計画の集合体であることです。

戦略実行において、行動とは一つではありません。多くの実行計画の集合体になるのが普通です。戦争であれば、実行計画とは一つ一つの部隊の動きに当たるでしょう。よい基本方針を立てたとしても各部隊の動きに整合性がなければ戦闘に勝つことはできません。

同様にマーケティング戦略では行動=4P(Product,Price,Place,Promotion)の整合性が重要になります。基本方針であるSTP(Segmentation,Targeting,Positioning)を実現するには、実行計画である4Pが一貫性を持って綿密に設計されている必要があります。

2.戦略実行事例:ハンニバルのカンナエの戦い

ハンニバル・バルカは紀元前247年-紀元前182年のカルタゴ(現在のチュニジア)の将軍です。ローマ帝国との第二次ポエニ戦争で連戦連勝を重ねた戦歴からローマ史上最強の敵として語り継がれています。また、戦争の戦略の古典的な例として2000年以上経た現代でも、研究の対象になっているのがハンニバルの戦略です。

ローマ軍に対し圧倒的勝利を得たカンナエの戦い

ハンニバルが指揮した戦いの中でも有名なのが「カンナエの戦い」です。ローマ軍8万に対してカルタゴ軍5万人。人数敵に不利な状況にかかわらず、この規模の戦争では奇跡的ともいえる圧倒的な勝利を収めました。ハンニバルは戦略の父とも言われますが、その最高傑作といえるのがカンナエの戦いです。

ローマ軍カルタゴ軍
戦力(開始時)80,000人50,000人
死傷者数60,000人5,700人
捕虜の数10,000人0人
カンナエの戦いの戦力と損害比較

カンナエの戦い:戦局推移

開戦時

開戦時は両軍とも古代ローマ時代の典型的な布陣である中央に歩兵、左右に騎兵を配置しています。

ハンニバルはここで歩兵の中央部をローマ軍側にせり出すよう弓形の陣形をとらせます。このとき中央は軽装歩兵ですが、弓形の根元の部分には粘度の高いカルタゴの重装歩兵を置いています。

カンナエの戦い(開戦時)

第1段階

ローマ軍が前進すると弓形の突出部が最初の接点になります。ここでカルタゴ軍の軽装歩兵はハンニバルが予め指示した通り少しずつ交代します。逆にローマ軍の歩兵は優勢とみて前進していきます。

カンナエの戦い(第1段階)

第2段階

一方、カルタゴ軍の左翼の騎兵はローマ軍右翼を速攻で撃破しました。兵士総数で大きく下回るカルタゴ軍ですが、騎兵は質量ともにローマ軍より上でした。

カンナエの戦い(第2段階)

第3段階

ローマ軍左翼騎兵は旋回したカルタゴ軍左翼の騎兵との挟み撃ちに遭います。また、カルタゴ軍重装歩兵が両翼に展開し始めローマ軍を囲み始めます。

カンナエの戦い(第3段階)

最終段階

最終段階では、ローマ軍はカルタゴ軍に四方から取り囲まれる形になりました。芸術的とも言われる包囲陣形の完成です。

カンナエの戦い(最終段階)

(文責:プロジェクトファシリテーター、ロジカルシンキング講師 海老原一司)