営業はRFP出されたら負け

営業はRFP(提案依頼書)受け取ったら負け|商談の極意

営業研修講師の海老原です。

「あなたは顧客からRFP(提案依頼書)や比較表を受け取ったことがありますか?」
「『営業はRFP受け取ったら負け』という言葉を聞いたことがありますか?」

私が主催する営業ヒアリング研修の受講者は、研修題材として自分の担当顧客の商談を持ち込みます。  

※ RFP=Request for proposal(提案依頼書)
 発注側がベンダーや開発者に対して提案書を提出してもらうために依頼する書面

Wikipediaより

営業Aさんは、提案中の商談を営業ヒアリング研修に持ち込みました。Aさん曰く「顧客窓口担当者の話をよく聞いて対応している」とのこと。
しかし、私には、営業ヒアリング活動が、顧客の表面的な発言内容に流されていると感じました。

商談の流れとして次のように顧客から営業AさんにRFP(提案依頼書)を渡されたようです。

  1. 顧客窓口担当者から自社商品の問い合わせがあった
  2. 営業Aさんが顧客訪問し商品説明を行った。「検討します」とのこと
  3. 2日後に営業AさんにRFPがメールできた。1週間で比較表を埋めてほしいとのこと

 順調に営業活動が進んでいるように思えます。しかし、私は営業ヒアリングがうまくいっていない、と感じました。
営業担当者がRFP(提案依頼書)をお客様から渡されたことでした。なぜ顧客からRFPを受け取ることに問題があるのでしょうか。実際の研修の会話を再現して解説します。

営業はRFP受け取ったら負け

なぜ営業ヒアリングがうまくいっていないと感じたのでしょうか。ポイントはRFPです。営業がRFPの情報をどのようにもらったかが分かれ目です。
RFPを中心に営業Aさんと顧客窓口担当者とのやりとりを具体的に教えてもらいました。

商談はRFP前に始まっている

Aさん:営業ヒアリング研修に今回の商談を持ち込んだ若手営業
Bさん:一緒に研修を受講したベテラン営業

【海老原】「『営業はRFP渡されたら負け』という言葉、知っていますか?
【Aさん】「初耳です。」
【Bさん】「知っています。RFPの内容は、提案する営業担当者が主導して作るべき、という話しですよね。」  

【海老原】「そのとおりです。RFPという体裁に限らず、最終的には顧客から営業に必ず提案依頼がきます。
しかし、RFPを渡されるときは、営業担当者に提案依頼する要件が固まったときです。通常要件が固まる前に顧客企業内では、案件の検討が始まっているはずです。
営業ヒアリングは、RFPを渡されるより前に、はじまっているべきです。」  
【Bさん】「えっ? 今の商談で、まさにRFPをもらっています。『この商談は負け』なんでしょうか?」

【海老原】「もちろん、RFPをもらったから必ず失注となるわけではありません。
しかし、営業ヒアリングでRFP作成過程に食い込めなかった時点で、後手に回っていることは確かです。

顧客はRFP作成、つまり要件定義過程で社外からも情報を集めて検討します。
この商談でRFPが出る前から営業ヒアリング活動している競合企業がいる可能性が高いですね。
【Bさん】「そうなんですか。」

顧客からRFP(提案依頼書)の次に比較表作成依頼

【海老原】「顧客担当者は、RFPを何社かに出しているでしょう。
その場合、次はRFPを元に『営業担当者に比較表作成依頼』をすることが多いですね。」  
【Bさん】「えっ? 今比較表を作っているところです。」
【海老原】「では、何社かの営業にRFPと比較表作成依頼をしているでしょう。おそらく3,4社くらいではないでしょうか。」

【海老原】「比較表の項目は指定されていますか?比較項目が指定されている場合、次の2つのどちらかです。

1.相見積のための比較表。つまりRFPを満たす商品の値下げ交渉材料
2.顧客担当者が比較表を作ること自体をゴールとしている

【Bさん】「そういえば、『比較表作れと上司に言われた』そうです。」

【海老原】「とすると、顧客担当者は、購買決定に特別意志を持っていないかもしれません。つまり、意志決定者はあくまで上司。上司に言われ、手足として比較表を作っているだけですね。  」
【Bさん】「比較表を埋めることしか考えていませんでした。
カナヅチで打たれたような、感じです。」

RFPを営業に渡すとき顧客社内で起きていること

顧客が営業にRFPを渡すとき、顧客社内では何がおきているのでしょうか。顧客担当者は何を求めているのでしょうか。
できるだけリアルに想像してみましょう。よくあるのが、以下のような流れです。

  1. 上司から担当者に製品調査の依頼が来る
  2. 窓口担当者は、5件程度、ネットで調べたり、資料請求する
  3. 窓口担当者は1、2社に会う。商品説明をしてもらう
  4. 担当者が上司へ中間報告する。上司が基本方針を決める。これがRFPとなる
  5. 上司から比較表作成を依頼される
  6. 窓口担当者は比較表作成の第1段階として資料請求した各社の営業にRFPを出す
  7. 窓口担当者は、詳しい説明を受けた会社の資料を元に比較表原案作成。RFPの回答があった企業の営業に比較表穴埋めを依頼する 
  8. 各社の情報を集め比較表完成。意思決定者である上司に渡す

担当者は上司命令でRFP情報収集しているだけ

顧客担当者の情報収集姿勢でよくあるのが「主体は上司、部下である窓口担当者が上司命令で情報収集しているだけ」というパターンです。

つまり、担当者と上司の意識が下記のように大きく異なります。

【担当者の意識】今回の商品選定に対する特段強い意志があるわけではない。上司命令をこなすこと、RFPを作ること、比較表を作ること自体がゴール。あとは上司の仕事
【上司の意識】実質的キーマン。商品選定に対する意思を持っている。自分の時間がないので、情報収集・取りまとめ作業は部下に依頼している。RFPや比較表には上司の意思が反映されている

営業担当が、RFPや比較表原案作成前にコンタクトがとれている企業が絶対有利です。
基本要件を考える、課題定義をする段階からパートナーとして一緒に課題解決方針を考えるのが理想です。

顧客窓口担当者が、比較表作成で考えること

比較表の項目が決まっており、比較表の穴埋めだけ依頼される場合があります。
このとき顧客担当者の目的は「比較表作成自体がゴール」か「相見積で値下げさせるための材料づくり」の、どちらかです。

上司に渡す比較表の体裁を整えたい

比較表を作る場合、社内説明上3社は比較したいところです。本命は2社でほぼ決まっていたとしても、数合わせのために3社目、4社目の営業に声を掛け、比較表の穴埋めだけ依頼することもあります。

比較表を使って相見積もりで値下げ交渉したい

また、必要とする商品スペックがほぼ決まっていた場合、比較表上は同等になる商品を2、3社から相見積もりをとります。こうして、値下げ交渉に使うのが、購買側の常套手段です。   
典型的には「比較表を使ってスペックが要件にあう企業を2,3社に絞る」「残った2,3社にさらに相見積もりをして値下げ競争をさせる」ことになります。

ソリューション営業は顧客RFPを作る

RFPや比較表を顧客から出されたら負け。では、どうするか。
ソリューション営業の理想は、顧客と一緒にRFPを作ることです。顧客社内の課題を整理し解決方針を考え、一緒に要件定義を作ります。この要件定義が、そのままRFPになります。

RFP作成時に真っ先に相談される存在になる

営業担当が、RFPを顧客と一緒に作る状態を作るにはどうしたらよいか。まずは、定期的にコンタクトをとり、思い出してもらう存在になることです。次に、相手の相談に乗ること、相手に価値のある情報提供をすることです。

顧客社内で最初に課題があがったときに、いきなり何社も営業を呼ぶ人間はいません。まず相談しやすい、参考になりそうな意見をくれる営業にコンタクトします。
営業の勝負所は、顧客キーマンの頭のなかで、真っ先に相談したい人として思い浮かべてもらえるかです。つまり営業の勝負所はRFPの前なのです。

まとめ:典型的購買意思決定プロセス

意思決定関与者が2名(上司とその部下1名)の場合の典型的な購買意思決定プロセスを示します。

典型的購買意思決定プロセス

RFPから顧客ヒアリングが始まったとき

顧客からRFPを渡されるということは、購買意思決定プロセスの二次調査段階です。ここでは購買の基本方針、つまり仕様や価格の概要もほぼ決まっています。
基本方針が決まっているのに、なぜ依頼するのか?理由は2つ。「稟議書を提出するためにベンダー比較が必要だから」と「相見積もりで値下げ交渉するため」です。

RFP依頼からスタートした場合、仕様が決まっているため商談に勝つ方法は1つしかありません。価格勝負です。ただ、自社商品を値下げすれば競合他社も値下げしてきます。一般に比較表に載る商品には大きなコスト構造の差はありません。商談に勝つには赤字覚悟の大幅値引きが必要になります。

基本方針相談から顧客ヒアリングが始まったとき

顧客担当者は知見のない商品は見積もり依頼、提案依頼の前に情報収集を行います。ここで情報収集から基本方針作成の相談に載ることがソリューション営業が目指すべきところです。

この段階で相談するのは、1、2社。多くても3社です(RFPの段階では5,6社に増える)。この一次調査・基本方針検討段階で声をかけられる関係を作っておきます。
基本方針の段階で相談を受ければ、自社に有利な仕様をRFP・比較表に織り込むことができます。比較表の枠の中ではなく、比較表の項目自体を顧客と一緒に作成します。

(文責:プロジェクトファシリテーター、ロジカルシンキング講師 海老原一司)


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