稟議書の書き方

【稟議書の書き方】2年連続100本承認のノウハウ(例文付き)

「あなたは、稟議書の書き方の基本を知っていますか」
「承認される稟議書とされないものの違いがわかりますか」

海老原です。
私は新規事業プロジェクトマネジャーとして累計500本程度、多いときは2年連続年間100本の稟議書を書き、社内承認をとってきました。

稟議書は非効率で面倒なものとして避けている方も多いでしょう。しかし、自社に稟議システムが存在する以上、事業推進のために稟議書の書き方をマスターすべきです。

東洋経済オンラインオンラインで「稟議書を年間100本通した強者」として紹介された筆者が稟議書の書き方と承認ノウハウを解説します。合わせて稟議書例文をまとめました。

1.稟議書とは

稟議書とは、会社の費用支出がある場合や社外と契約書を締結する場合に、企業内で実行承認を行うための書類です。

「起案者」が作成し、規定された権限に基づき、起案者の上司や関係者が「決裁承認」します。一義的には稟議書は、書類・文書のことです。
しかし、実務上は、「稟議書とは書類を含めた企業内の承認業務フロー全体のこと」と理解した方がよいでしょう。

【参考】Wikipedia稟議書

なお、厳密には決裁書・起案書とは異なります。ただし、企業の社内業務においては、実質的に「稟議書は、決裁書・起案書と同じもの」と考えて良いでしょう。

2.稟議書の書き方の基本

稟議書には、これがないと承認されないという必須項目があります。多くの会社で、稟議書は承認フローは業務規定でマニュアル化されていても、何を書くべきかは説明されていません。稟議書を通すのに必須の5項目を解説します。

2-0.5つの必須項目とは

稟議書の書き方でまず理解すべきは記載項目です。下記5つの項目が網羅されている必要があります。

  1. 稟議書案件の実行目的
  2. 稟議書案件にかかわる金額(支出または収入がある場合)
  3. 稟議書で承認してほしい契約内容(契約書締結が必要な場合)
  4. 稟議書案件が実行された場合の予想されるリターン
  5. 稟議書案件の実行に当たって予想されるリスク

私は過去100人以上の商品企画者が稟議書の書き方を見てきました。その経験から、稟議書が却下される原因の多くは、初歩的な基本項目記載モレである、と断言できます。

稟議が却下されることが多い方は、この5つの基本項目を踏まえた稟議書の書き方を意識するだけで決済承認確率があがります。

2-1.項目別稟議書の書き方-実行目的

稟議書の書き方で5つの必須項目について注意すべき点を解説します。まずは、稟議書決裁案件の実行目的です。

稟議書実行目的の書き方はシンプルに

稟議書案件の実行目的は、とにかく必要なことだけをシンプルに書くことです。稟議書決裁者は忙しいもの。だらだら文章を書いては、承認可否を考える前にスルーされてしまうこともあります。

稟議書案件の実行目的で、書くべき内容は5W1Hです。つまりWho(だれが)When(いつ)、Where(どこで)、What(なにを)、Why(なぜ)、How(どのように)です。

稟議申請に関係ないことは書かない

実行目的の書き方一つのポイントは、「稟議書の文書に関係がないことは書かない」ことです。

稟議書は、1つの文書の中だけで情報が完結します。よって、例えば、稟議書文書に書かれていない間接的なリターンの話や、これまでのビジネス検討経緯などを書く必要はありません。
今回の決済承認に関係することだけに絞ります。

2-2.項目別稟議書の書き方-実行金額

稟議書の書き方で最重要項目とも言えるのが実行金額です。

稟議書承認により直接支出する金額

稟議書の種類で最も数が多いのが「購買稟議」でしょう。購買稟議では、購入金額を正確に記載します。ここでいう「正確」とは、契約書の金額と一致していることです。通常5の「契約内容」で添付する契約書類の数字と1円単位で一致している必要があります。

また、支出金額は、今期のどの予算項目に割り当てるのかの記載も必要です。一般的には、予算項目、予算執行額、予算残高の3つが必要でしょう。

直接支出はないが稟議書承認に関連する金額

今回の稟議書承認で直接支出が発生する金額のみ記載すれば良いのが、シンプルな稟議書です。

ただし、稟議実行により将来新たな支出が予想される場合は、予め予想金額を示しておいた方が良いでしょう。決裁者は、追加支出に敏感です。

追加支出がある代表例は、保守費でしょう。例えば次のように記載します。「【補足事項】本契約にはハードウェアの初年度保守費用が含まれている。次年度保守更新を行う場合の費用は年額10万円となる」

稟議金額と消費税

稟議書の書き方に慣れていない方は消費税の記載方法を迷う方もいるのではないでしょうか。法律が何度か改定されていますが、消費者向け金額表記は「税込み」が基本です(税抜きを記載してもよいが、税込み金額表記は必須)。

一方、法人の稟議書では「税抜き」が基本です。なぜなら、会社の予算項目がすべて税抜きで計算されているからです。税抜き金額の記載は必須。企業によっては「税込み金額も」記載するルールを採用するところもあるでしょう。

2-3.項目別稟議書の書き方-契約内容

稟議書の書き方必須項目の一つが、契約内容です。稟議書の実行には契約書がつきものです。契約書は、大きく金額が発生する契約と金額が発生しないの2つに分かれます。

金額が発生する契約

金額が発生する契約書の典型は購買契約書です。企業間取引で金額が発生するときは、必ず契約書の締結が必要です。購買契約書の一つの型が見積書です。稟議書申請時には見積書を添付します。

なお、見積書が契約書の一部であることを理解していない方も多いようです。見積書は契約書の一つです。よって、金額だけでなく各種条件のチェックも必要です。
例えば、「見積期限」「納品場所」「納品時期」など見積備考もしっかり確認すべきです。

金額が発生しない契約

機密保持契約など直接金額が発生しない契約書です。多くの会社で契約書の社印捺印に稟議書承認が必要です。

なお、機密保持契約のみで金額が発生することはありません。しかし、訴訟リスクなどを踏まえ稟議書による体系的なチェックされるのが普通です。

2-4.項目別稟議書の書き方-リターン

稟議書の書き方で5つの必須項目の注意すべき点を解説します。次は、稟議書決裁案件が実行された場合の予想されるリターンです。

稟議書では企業のリターンを定量的に示す

稟議書必須項目の4番目は「稟議書決裁案件が実行された場合の予想されるリターン」でした。ここでのポイントは如何にリターンを論理的かつ定量的に書くかです。

承認される稟議書は経済合理性に基づきコストとリターンが定量的に記載されます。

稟議書で示すべき数式「費用 < リターン」

稟議書では、「稟議対象の費用 < 稟議実行した場合の経済合理的リターン」という数式が成り立っている必要があります。

例えば、何かのシステムを購入するなら、そのシステム導入により「業務効率化などで投資額以上にコストが減る」「販売増などにより投資額以上に利益が増える」のどちらか、またはその足し算です。

これらの経済合理的計算を理性的には理解していても、「面倒だな。あの課長いちいち細かいところまで指摘して」と毛嫌いする方も多いでしょう。
しかし、営利企業である限り当然のことなのです。営利企業は善悪にかかわらず必ず儲けなければなりません。

稟議書は経済合理的判断を担保する仕組み

営利企業は必ず儲けなければならない。そして、社内で適切な投資判断が行われているかをチェックする仕組みが、稟議書システムです。

例えば、明らかに損失がでる投資決断を行ったら株主訴訟を受けても仕方ありません。そのため、監督責任をもった承認者は細かい数字までチェックせざるを得なくなります。

2-5.項目別稟議書の書き方-リスク

稟議書の書き方で5つの必須項目の注意すべき点を解説します。次は、稟議書決裁案件の実行に当たって予想されるリスクです。

稟議書の書き方として実行内容もリターンもしっかり明記されているとします。それでも、リスクを考慮した稟議書の書き方がされていないと承認されません。

承認者が見るのはネガティブリスク

承認された稟議内容は社内の証拠、株主への約束です。このとき承認者が気にするのがリスク回避です。発生可能性のあるリスクとその対策を事前に明記します。

リスクという言葉は変動の大きさを表します。つまり本来上振れするポジティブリスクも下振れするネガティブリスクの両方があります。
しかし、稟議書では必ずネガティブリスクだけが注目されます。日本の稟議システムは失敗を回避することに重点が置かれています。

稟議書実行リスクの書き方

承認者が稟議書リスクをチェックするときの一つのポイントがあります。

リスク有無やリスク大小以前に「そもそもリスクをきちんと検討していること」です。
リスク確認を行っていることを示し承認者を安心させます。具体的なリスク回避方法を書かずとも、「こういう方法でリスクチェックした」だけで済む場合もあります。

また、リスク回避の対策を示す代わりにリスクが小さいことを示すこともあります。「●●のリスクはあるが、発生したとしても××のため影響は軽微である」といった書き方です。

リスクは書かない方が承認されやすい?

なお、承認をとりやすくするためリスクはあえて書かない方がよい、と考える方もいるでしょう。「承認者が気にしそうなリスクは、先手を打って提示しておくべき」が私の立場です。

いくつもの稟議を確認する上位承認者は、リスクの有無、大小を重点的にチェックします。そして経験のある承認者は、起案者が隠したリスクを見逃しません。
それよりは、起案者が言われる前に出すことで「私はリスクを十分考慮して申請しているので安心してください」と思ってもらうと承認がスムースです。

3.承認される稟議書の書き方のコツ

稟議承認システムとは社内のチェック機構です。稟議書の各承認者は、問題点がないかネガティブチェックするという心構えで目を通します。
承認されやすい稟議書の書き方では、細かいネガティブ要因、不備要因をできるだけ排除するのが基本です。

3-1.シンプルで正確な日本語で書く

稟議書確認者には、内容に問題がなくても「てにをは」が間違っているだけで却下する方も多くいます。日本語はシンプルに書くこと。そして、Wordの校正機能などを使って基本的な日本語のミスがないかチェックしてから稟議書をあげましょう。

特に金額が大きい重要な稟議書ほど、この傾向が強いです。ただし、大きな取引ではちょっとした解釈ミスで会社が損失を被ることもあるので、承認者が敏感になるのも当然です。

3-2.判断に必要な情報はすべて載せること

稟議書で承認却下されやすいポイントの一つが「情報不足」です。といっても複雑な話ではなく、「見積書が添付されていない」「収支計算根拠が書かれていない」と単純な情報不足が多いものです。
判断に必要な情報は稟議書システム内ですべて完結している必要があります。このファイルは別途メールで共有といった例外はありません。そのため複雑な稟議では、多くの添付ファイルが必要になります(稟議書例文参照)。

4.稟議書例文まとめ

具体的な、稟議書例文を見てみましょう。構成や文言の書き方などの注意点は、過去の実在の稟議書を、ほぼ再現しています。稟議書例文を通して、基本5項目の書き方を確認してください。

【稟議書例文①】SFA(営業支援サービス)導入

【タイトル】セールスフォース社SFAサービスの営業部への導入について

■1.目的・概要

当社の営業部では営業効率向上が課題となっている。昨年度売上が未達であり営業担当者一人当たり10%の売上アップが必要。営業効率向上のためセールスフォース社SFAサービスを営業部メンバー20人に導入するための承認お願いします。

■2.契約予定サービス

1)サービス
セールスフォース社SFAスタンダードライセンス 20ライセンス
2)費用
月額費用:1万円(スタンダードライセンス)×20ライセンス=20万円(税別)年額費用:1万円(スタンダードライセンス)×20ライセンス×12ヶ月=240万円(税別)
※ 営業部メンバー20名全員にライセンスを付与予定

■3.導入効果

重点顧客の訪問効率化、受注率向上により1人当り売上昨年比10%向上予定。
また、受注データ連係により、これまで営業事務2名が毎月3日間かけていた営業データ集計作業が1日に短縮される。

■4.リスク

情報システム部の監査も受けておりセキュリティ上の懸念がないことを確認済み。
ただし、各営業担当者がモバイル端末で閲覧可能な個人情報データが増えるため情報漏洩リスクが高まる。データ取得権限の制限とセキュリティ教育で対応予定。

■5.本稟議に関連する契約

添付PDFの契約書を締結予定(※法務部確認済み)。

■6.その他補足事項

セールスフォース社以外に2社の競合サービスを比較したが、機能が充実していること、中途入社の管理職層に使用経験者が多いことからセールスフォース社を選定した。 添付比較表参照。

【稟議書例文②】サービス設備増強

【タイトル】●●サービスの設備増強に関する追加設備の購入について

■1.目的・概要

●●サービス設備稼働率が、XX%となっており、設備増強の必要がある。
ついては、「2」記載の設備購入について承認お願いします。
なお、現在A社に7月導入希望で、サービス契約の内諾をいただいており、本稟議の設備購入は早急に進める必要があります。

■2.今回の購入設備

1)●●に関する設備増強
製品A:一式
製品B:13式
※その他詳細については、添付1のF社見積ファイルを参照ください。
2)購入金額
XXX,XXX,XXX円
※2017年度予算残額、YYY,YYY,YYY円
詳細は、添付ファイル2の「2017年度予算管理票」を参照ください。
3)購入予定会社
I社
※2017年計画時のコンペにて、最低価格であり継続購入。
なお、年初計画時の検討資料については、添付3「2017年度購入設備シミュレーション結果」を参照ください。

■3.収支計画

今回の設備購入および売上を勘案した収支計画は添付4「2017年収支計画(2017年5月10日版)の通りです。
なお、2017年度収支計画および設備投資予算計画については、2017年4月2日付けの決済番号XXXX-XXの稟議を参照ください。

■4.その他補足事項

今回購入設備は、決裁番号XXXX-YYと同じ製品であり、すでに2017年2月より、J社にてサービス稼働中です。

■5.本稟議に関連する契約

本設備投資に当たり、添付4の「●●に関する保守サービス契約書」の締結が必要となります。
なお、本契約書は、決裁番号XXXX-YYでの設備購入時と同一であり、契約内容は、法務確認済みです。

(文責:プロジェクトファシリテーター 海老原一司)

■稟議書に関する海老原取材記事(東洋経済オンライン)

稟議書のプロとして東洋経済オンラインに取材された記事です(2017/09/30)。

取材記事引用

次に取材記事一部を引用します。

「素早く確実に稟議書を通せるようにならないと、多くの仕事をこなせず、成果も挙げられません。若いうちから稟議書を通すノウハウを身に付けたほうがいいですよ」と話すのは、企業研修やコンサルティングを手がけるシナプスのチーフコンサルタント・海老原一司氏。
かつてIT企業で新規事業を手がけていた時、年間100本の稟議書を通していたという強者だ。

東洋経済オンライン

1で挙げた項目のうち、とくに念入りに書いたほうが良い項目は、「リスク」だ。
「稟議書は、一言で言えば『あら探し』をする書類。会社に損失を与えるようなことにゴーサインを出したとなれば、その上司の責任になりますからね。だから、リスクの部分はとくに注目します。ところが、若い人はリスクの記述が甘い人が多い」(海老原氏)

東洋経済オンライン

リスクに加えて、どれだけの成果や効果が見込めるのかという「リターン」に関する記述が甘い人も少なくない。
契約でも物品購入でも、お金をかけた以上は、必ずリターンがあることを示すことが必要だが、「実際には『大口顧客だから値引きして』といった程度しか書いていない稟議書をよく見かけました」(海老原氏)。
「今回の取引で値引きすることで、もっと高額な製品の受注につながる」といったリターンの可能性をきちんと明示することが必要だ。

東洋経済オンライン

東洋経済オンライン取材記事リンク

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